IoT分野での利用を想定した新しい無線LAN規格「IEEE802.11ah」(Wi-Fi HaLow)の標準化作業が大詰めを迎えている。技術仕様の検討はすでに終わり、最終確認を経て9月には標準化が完了する見込みだ。
11ahの最大の特徴は、伝送特に優れるサブGHz帯(日本では920MHz帯)を利用し、半径1kmまでの長距離通信を実現する点にある。最大接続数も現行の約2000から約8000に高め、動作条件によるが単3アルカリ電池1個で数年間の動作も可能になるという。
だが、この11ahが日本でどう使えるかにはまだ不透明な部分が少なくない。
日本の920MHz帯は、免許不要で利用できるアンライセンスバンドだが、その利用条件を規定する端末設備規則はRFID(無線タグ)や低速センサーネットワークなど、従来からこの帯域を(旧950MHz帯と同様に)利用している狭帯域システムを前提に作られている。規制が現在のままでは、長距離伝送用の出力250mWはもちろん、免許不要のデバイスで一般的な出力20mWでの通信も難しいと見られているのだ。11ahの導入のためだけに、直ちに規制の変更を実現するのも容易ではない。
IoTシステムなどのコンサルティングを手掛けるシュビキスト・テクノロジーズ・ギルド代表で、無線LANの技術標準化に携わっている島田修作氏は「現行の規制を前提にTELEC認証を受けようとすると、送信電力20mWカテゴリの特定小電力無線の場合は5mW程度に、送信電力250mWカテゴリの簡易無線の場合は70mW程度に、それぞれ送信電力を制限した運用が必要。1回の送信時間を6m秒以下に抑えるといった運用も必要になる」と語る。
制限を回避するには「日本仕様」デバイスの開発が必要で、当面は米国などと比べて、用途が限られる可能性があるのだ。