「ロボットと一緒に生活する」――。フィクションのような世界が現実になり始めている。
「業界によっては、今年末または来年にはロボットが業務をこなすシーンが普通になる」と語るのは、ソフトバンクロボティクス事業推進本部・本部長の吉田健一氏だ。
PwCコンサルティングでディレクターを務める水上晃氏も、「2020年には消費者はロボットと生活し、企業はロボットをビジネスで利用しているだろう」と予測する。
すぐそこに迫った未来をこのように語る両社は、ロボットを「スマートロボット」と呼び、IoT(Internet of Things)とAI(人工知能)との関連で捉えている。
ソフトバンクロボティクスの吉田健一氏は、「我々はこれからのITのコアはスマートロボット、IoT、AIの3つだと考えている。スマートロボットはAIのフロントであり、数多あるIoTデバイスのなかで対人コミュニケーションをつかさどる」と説明する
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IoTと人間をロボットが仲介スマートロボットは、IoTデバイスの1つとしてインターネットに繋がりながら、人間とIoTを仲介する対人インターフェイスの役割を担う。
「IoTシステムから出てくる情報を人間に伝えるという意味では、スマートロボットはPC、スマートフォン、タブレットと横並びかもしれない。だが、スマートロボットは能動的に人間に働きかけてくるため、これまでの世界観が一変する」と、PwCコンサルティング シニアマネージャーの矢部篤樹氏は説明する。
自らの視覚と聴覚で映像データや音声データを取得するスマートロボットは、他のIoTデバイスが生成するデータを取り込んだりしながら、AIを利用して学習・推論・判断する。そのため、人間がその都度指示を出さなくても自律的に動き出すことができるのだ。
例えば、自宅用のミネラルウォーターをネットで購入したいとき、現在は自分でPCやスマホを開き、通販サイトで欲しい商品を検索し、オンラインの買い物かごに入れてから決済ボタンを押しているだろう。人によっては、時間をかけて様々なサイトの価格を比較して、最安値のお店を選んでいるかもしれない。
しかし、もしスマートロボットがいたらどうだろう。「ミネラルウォーターがなくなっちゃった」と困った様子で呟くだけで、いつものブランドのミネラルウォーターをロボットが通販サイトで自動的に検索し、最安値の商品を見つけ出す。そして、「いつも買っているミネラルウォーターなら、ここが一
番安いです。これを1ケース買いますか?」などと人間に問いかけ、クレジット決済までしてくれる。ロボットが実現する未来の1つだ。
「わざわざPCやスマホを開かなくても、ロボットに『買って』と言うと通販サイトで購入してくれて、その商品が宅配便で自宅に配達されればIoTの価値はより一層高くなる。スマートロボットが人とIoTの真ん中にいると、IoTは完成する」と水上氏は述べる。
IoT化が進み、洗濯機、電子レンジ、エアコン、照明器具などがネットワークに繋がったとしても、そこで得られたデータを何らかの形で人にフィードバックしなければ、IoTのメリットは享受できない。
しかし、家電がそれぞれ個別にアクションを仕掛けてくるようでは騒々しい。また、家電1つひとつに人とコミュニケーションする機能を搭載していては、製品の本質以外の部分にコストがかかってしまう。
そこで登場するのがスマートロボットだ。人とIoTを繋ぐハブの役割をロボットに託せれば、問題は一気に解決する。