光伝送装置ベンダーの米インフィネラ(Infinera)は2016年3月21日、光スーパーチャネル技術により、最大2.4Tbpsの容量で1万2000kmの長距離伝送性能を実現できる光サブシステム(光通信モジュール)「Infinite Capacity Engine」を発表した。
2001年に創業したインフィネラは光通信に必要な受発光素子や変調器、増幅器などのデバイスをワンチップ化した光集積回路(PIC)の開発に他社に先駆けて成功。2004年秋からPICを用いた光伝送装置を唯一展開している。現行のPICでは5㎜四方のInP(リン化インジウム)基盤に数百のデバイスが組み込まれており、500Gbpsの光通信への対応が可能だ。
Infinite Capacity Engineは、この500Gbps対応PICの後継となる「第4世代PIC」と、同社が自社開発したPIC用ASIC/DSPおよび制御ソフトからなる「FlexCoherentプロセッサ」を組み合わせたチップセットである。
インフィネラ・ジャパンでカントリー・マネージャを務める秋元正義氏は、「Infinite Capacity Engineという名前は、無限の容量に対応できる、無限の可能性持つエンジンといった意味で名付けられたもの。これを搭載した製品群を今年末ぐらいから市場投入することを計画している」と明かす。
インフィネラ・ジャパン カントリー・マネージャの秋元正義氏(左)とダイレクター システムエンジニアリングの金親義一氏 |
Infinite Capacity Engineの大きな特徴の1つが、冒頭で記した大容量・長距離通信性能だ。
スーパーチャネルは複数の波長をまとめて1つの信号として取り扱う高速光通信技術だが、このスーパーチャネルを用いた他社製品は、主に200/400Gbpsの通信速度で400km程度の通信を行うメトロネットワーク向けとして展開されているという。
これに対し、現行PICを用いたインフィネラの光伝送装置は、500Gbpsの通信速度で大陸間海底ケーブル通信に対応できる1万kmの伝送が可能。Infinite Capacity Engineではこれが最大2.4Tbps、1万2000kmに拡大される。
スーパーチャンネル技術を用いた他社の光伝送装置との比較 |
こうした性能は、高度な信号制御技術の導入やPICのデバイスの精度の高さによって実現しているそうで、秋元氏はさらに「7.2Tbpsに対応するための技術開発も進めている」と話す。また、Infinite Capacity Engineでは、変調方式やボーレートを柔軟に変更し通信環境・用途に応じた多様な通信速度に対応することや、L1レベルで超低遅延の暗号化を行うことも可能だという。
Infinite Capacity Engineのもう1つの大きな特徴といえるのが、省電力性能の高さだ。同等性能の競合製品に比べ、82%少なくて済むという。
インフィネラ・ジャパンのシステムエンジニアリング担当ダイレクターの金親義一氏は、「急増するデータトラフィックへの対応を、コストを抑えて実現することが通信事業者にとって大きな課題となっている。特に設置スペースや既存の電源設備で対応しきれないといった点が問題になるケースが多い。Infinite Capacity Engine搭載製品はこれらの課題を解決し、通信事業者の競争力向上を図る有効な手段になる」とする。
加えて金親氏がInfinite Capacity Engine搭載製品の大きな利点と紹介するのが、SDNと組み合わせられることだ。これにより、ユーザーに100G単位でオンデマンドによる帯域提供を行うといったサービスの提供も可能になり、「新たな収益の創造につながる」という。
SDNを活用した柔軟な帯域サービスのイメージ |
インフィネラは日本でも10年前から事業を展開しており、NTTコミュニケーションズやソフトバンクなど大手を中心に約10社の通信事業者で同社の製品は使われている。データセンター間接続向け製品は日本インターネットエクスチェンジ (JPIX)にも採用された。
秋元氏は「通信事業者向け製品はボード単位で増設できる。このため、Infinite Capacity Engine搭載製品についても、既存設備の増強などで早期に導入が進むのではないか」と期待をかけている。