J.D.パワーは携帯電話サービスに関する顧客満足度調査を実施している。この調査では大手3キャリア(NTTドコモ/au/SoftBank)の満足度を測定しているが、それ以外にも各種利用実態やブランドイメージも聴取している。キャリアに対するブランドイメージの推移をみると、2011年から2015年の5年間で軒並み低下しており、特に「信頼」イメージの低下が顕著となっている(図1)。
図1 キャリアイメージ(複数回答/2015年と2011年の比較)(%) |
加入年数別でみると、長く利用している利用者(=長期ユーザー)ほど低下が目立つ。さらに長期ユーザーの中で、信頼イメージを持っている層と持っていない層を比較すると、信頼イメージを持っていない層ほど継続利用意向は低い。つまり、長年愛用している長期ユーザーであっても、信頼イメージが低下するとキャリアスイッチの可能性は高まるのだ。
続いて、長期ユーザーはどのような要素に不満を抱いているか満足度という観点からみてみよう。J.D.パワーの調査では携帯電話サービスの満足度を、「電話機」「通信品質・エリア」「提供サービス」「各種費用」「電話機購入経験」「アフターサポート」の6つの要素で聴取しているが、長期ユーザーは「各種費用」に対する満足度が著しく低い(図2)。
図2 加入年数別 費用満足度(スコア) |
本調査より、長期ユーザーほどインターネットや動画を閲覧したり、音楽を聞いたりする頻度が低く、さらに「料金がサービス内容や品質に見合っている」と考える人が少ないことが明らかとなっている(図3)。このような背景から、「毎月のデータ通信量が少ないユーザーほど割高」とも言われる現行プランに対して、長期ユーザーほど不満を感じていると推測される。
図3 加入年数別 「料金がサービス内容や品質に見合っている」イメージ(%) |
現在、各キャリアは長期ユーザー向けの優遇策も取ってはいるものの、新規顧客獲得のキャンペーンに力を入れているのが現状である。この5年間で「加入時のキャンペーンがよかった」という理由で加入する人は増加しているが(図4)、このような理由で加入した人は、数年経つとスイッチする可能性が高い(図5)。ともすると、コストをかけて新規顧客を獲得してもまた流出という悪循環に陥りかねない。
図4 1年以内加入者における「加入時のキャンペーンがよかった」理由で加入した人の割合(2015年と2011年の比較)(%) |
図5 「加入時のキャンペーンがよかった」理由で加入した人の継続利用意向(%) |
ビジネス基盤を拡大させるため新規顧客を獲得することはもちろん重要だが、一方で既存顧客を保持していくことも重要である。それゆえ、キャリアは既存顧客の声に耳を傾け、ユーザーの多様な利用実態に沿った料金プランの提供や、顧客の顕在化したニーズ、さらには潜在的なニーズを掘り起こしサービスを提供していくことが求められよう。
<調査概要>
J.D. パワー アジア・パシフィック(http://japan.jdpower.com/ja)
「2015年日本携帯電話サービス顧客満足度調査」
当調査は、全国10地域(北海道/東北/北陸/関東/東海/関西/中国/四国/九州/沖縄)における携帯電話の個人利用者(16~64歳)を対象に携帯電話サービスの満足度を明らかにするものである。17回目となる今回は2015年7月にインターネット調査を実施し、総計3万1200人から回答を得た。