「人間に付けるIoTはウェアラブル、人間に付けないものはIoTと呼ばれているわけだが、1年半前、日本にはすごいチャンスがあった。しかし、この1年半で日本はチャンスを逃した」
2014年3月の初開催から1年半、今年9月7日~8日に2回目が開かれたカンファレンスイベント「Wearable Tech Expo in Tokyo」。その「“ウェアラブル×IoT”で日本は何を発信するのか」と題されたディスカッションにおいて、慶應義塾大学大学院 特別招聘教授の夏野剛氏はこう述べた。
(左から)モデレータの上路健介氏、慶應義塾大学大学院 特別招聘教授の夏野剛氏、ネットイヤーグループ CEOの石黒不二代氏、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 理事・スポーツディレクターの室伏広治氏、同 テクノロジーサービス局 局長の舘剛司氏、モデレーターの湯川鶴章氏 |
期待感ばかりが先行していた1年半前と比較すると、Apple Watchも発売された現在、ウェアラブルやIoTは様々なトライを重ねながら、ビジネスの本格立ち上げを目指すフェーズにあるといえるだろう。
ただそうしたなか、日本は欧米に大きく出遅れてしまった、というのが夏野氏の見方だ。ネットイヤーグループ CEOの石黒不二代氏も、「私も今、IoTでは非常にビハインドだと思っている」と話した。
では、ウェアラブルやIoTにおいて、日本が勝てるチャンスはもうないのだろうか。
夏野氏は、欧米とは違う分野を攻めるべきという意見だ。「例えば、スポーツ界のIT化は、アメリカでもヨーロッパでもそんなには進んでいない」。5年後には、世界最大のスポーツイベントであるオリンピックも東京で開催される。
また、石黒氏は次のように語った。「インターネットで負けて、次にモノにインターネットが入ってくるとき、モノづくりの国、日本はどこまで行けるのか。オリンピックに向けて、日本が持っている資産はそんなに悪いものではない。私は挽回可能だと思っている」
スポーツ×ウェアラブルの融合――。2020年に向けて、その可能性を追究することこそが、日本がウェアラブルやIoTで勝つための大きなカギを握るというのだ。
「80年代に日本はウォークマンを作った。スポーツでも、そんな今までにないテクノロジーを実現することが、日本ならできるのではないか」
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 理事・スポーツディレクターの室伏広治氏によれば、実際、こうした期待が海外の関係者からは寄せられているという。