2020年には500億のデバイスがネットワークに接続されると予測されているが、その大半を占めるのがいわゆるIoTデバイスだ。「例えば、自動運転のクルマや、自動制御の医療機器なども登場しているでしょう」とノキアネットワークスのセキュリティ部門の責任者を務めるジュゼッペ・タルジア氏は話す。
こうしたなか懸念が高まっているのが、IoTのセキュリティである。
「私たちノキアは『プログラマブルワールド』というコンセプトを掲げています。プログラマブルワールドというのは、単にモノがインターネットにつながるだけではなく、モノがインテリジェンスを持って判断できる世界を指しています。こうした世界において、セキュリティがどうなるかを想像することは大変難しいことです。もちろん攻撃の手口は増えるでしょうし、攻撃箇所も増えます」
2020年には、500億ものデバイスがサイバー攻撃の対象になり得る。そして、そのなかには、自動運転車や医療機器など、ハッキングされれば、人の生命を脅かす可能性があるデバイスも含まれているのである。
長年にわたり人類を守ってきた「免疫系」に学べ
このようにIoTのセキュリティは非常に重要な問題だが、具体的にどうやってIoTデバイスを脅威から保護していけばいいのだろうか。
1つの方法は、IoTデバイスにマルウェア対策ソフトを搭載することだが、タルジア氏はこれに懐疑的だ。なぜなら、多くのIoTデバイスには、限られた処理能力とバッテリーしか搭載されていないからだ。
「スマートフォンにおけるマルウェア対策ソフトの導入率は14%しかありません。その大きな理由は、スマートフォンの処理能力とバッテリーが限られているからです。処理能力やバッテリーがさらに限られているIoTでは、事態はもっと悪くなるでしょう」
また、仮にIoTデバイスにマルウェア対策ソフトをインストールしていても、すべてのマルウェアをブロックできないことは、これまでのセキュリティ対策の歴史からも明らかである。
そこでタルジア氏は、IoT時代のセキュリティは、「人類を長年にわたり守ってきた免疫系に学ぶべきです」と主張する。「ヒトの免疫系がこれだけうまく機能してきたのは、ウィルスなどの病原体を遮断するのではなく、内側に侵入したウィルスを理解し、そのうえで保護する仕組みだからです」