初めまして。西俊明と申します。私は17年間、IT企業でマーケティング業務に従事した後、2008年に中小企業診断士として独立し、主にITやマーケティングの観点から中小企業支援を行っております。今回から始まる本連載では、私の中小企業支援の活動・経験の中から「経営層がよく直面する課題や悩み」を切り口に、その解決策としてICTの活用術やその効果、導入事例などをご紹介して参ります。よろしくお願いいたします。
さて、第1回目は、企業経営者にとって永遠の課題である「売上を上げたい!」をテーマに、効果的なICTの活用術をご紹介しましょう。
「営業を強くしたい!」
売上を上げるための施策といえば、まずは「営業力の強化」を思い浮かべる方も多いでしょう。私が以前ご支援していた企業の社長もそうでした。
他の多くの企業のケースと同じように、その企業の営業のやり方にも属人的な要素が強く、営業ノウハウが組織に蓄積されにくい傾向がありました。できる営業担当者の中にはノウハウを隠す者もいれば、そもそも「自分の持つノウハウを言語化できない」担当者もいました。
もちろん営業手法が属人的でも、できる営業担当者ばかりであれば、売上は十分に上がるでしょう。しかし、その企業の営業組織全体の中では、できる営業マンは少数派でした。そのため社長は「営業担当者全体のレベルの底上げが必要」と考えていたのです。
そこで、私と社長はSFA導入を意思決定しました。SFAとはSales Force Automationの略であり、「営業支援システム」と訳されます。
SFAにおいては、営業担当者各人が自分の抱える案件情報をシステムに登録することにより、営業部門全体ですべての案件情報の可視化が可能になります。たとえば、あまり成績のよくない営業担当者が抱えている案件情報の詳細を上司やチームメイトと共有することにより、成績のよくない担当者に効果的にアドバイスできます。さらに案件情報の共有化は「案件の引き継ぎ」や「担当者不在時における顧客からの問い合わせ対応」の際にも有利に働きます。
このように、SFAには属人的営業手法から脱却し、チームセリングを実現する効果があります。
とはいえ、SFAは導入すれば必ず効果がでるというものではありません。
実際のSFA導入においては、確実に効果を上げるために、以下の2点に特に留意しました。
(1)できる営業担当者は、もともとSFAがなくても成果を上げている。そのような彼らにもシステム入力の負荷を与え、さらに他のチームメイトへのノウハウ提供を強いることになる。そのため、彼らのモチベーションを維持するための人事評価上の配慮を行う
(2)SFAの入力項目は「営業活動状況の共有」に関連する最低限のものに絞る。よくある他社失敗事例として、「SFAの入力が負荷となり、その分、顧客訪問時間が減少し、かえって営業成果が下がる」ことがあるので注意する
この2点を押さえた運用により、この企業では営業部門のメンバー全体の底上げに成功し、売上拡大も実現できたのです。