NTTドコモは回線・ネットワークを核としながら、M2Mデバイス用の通信モジュール、プラットフォーム、そしてM2Mアプリケーション開発の領域まで幅広くビジネスを行っている。
中でも現在力を入れているのが「グローバル展開、デバイス開発、アプリケーション開発の3点で」お客様をサポートすることだとNTTドコモの一矢康雄氏は話すが、最初のグローバル展開については「Embedded SIM(eSIM)」と、各国キャリアとのアライアンスがキーになる。
遠隔からSIMを書き換え
eSIMとは、ドコモの電話番号だけではなく海外通信事業者の電話番号も書込みが可能になるもので、ドコモは2014年6月からこれを、docomo M2Mプラットフォームの機能として提供している。
M2M機器を海外で利用する時に、通信に必要な情報を管理するサブスクリプションマネージャーから遠隔でSIMに書き込まれている通信プロファイルを変更し、現地の通信回線を利用できるようにする。
従来は、複数国でM2M機器を利用する場合、その製造時に各通信事業者が提供するSIMを個別に組み込む必要があった。だが、eSIMを導入すれば、製造時に1種類のSIMを組み込むだけで、機器の利用開始時に現地の通信事業者の通信プロファイルを随時書き込むことが可能になる。
これにより海外展開する企業は、部品を共通化して製造効率および在庫管理の効率を向上させることができる。もちろん、利用する国を変更する場合にも同じSIMで利用することが可能だ。
とはいえ、eSIMを実際に機器に組み込んでグローバルに展開するには、SIMの変更後の課金やサポートの仕組みなど事業者間およびユーザー企業との間で調整すべき点も多い。ここで重要なのが、通信事業者間の連携である。
ドコモはJasper Technologies社のM2Mプラットフォームを採用しており、同じプラットフォームを採用する海外8キャリアと「M2M World Alliance」を締結している。
これは、現地サポートの提供、一括契約や請求の対応、技術協力などでの連携を目的としたもので、eSIMの仕組みもこの8キャリアとの間で実現しており、eSIMを運用する仕組みを構築しているところだ。なお、今後eSIMが利用できる国・キャリアも増える予定という。
M2M World Allianceには、NTTドコモのほか、Telefonica(スペイン)、KPN(オランダ)、VimpelCom(ロシア)、Rogers(カナダ)、Telenor Connexion(スウェーデン)、Telstra(オーストラリア)、SingTel(シンガポール)、Etisalat(アラブ首長国連邦)が加盟している |
また、Jasper Technologiesのプラットフォームは世界で2500社以上の豊富な導入実績を持ち、M2M World Allianceの加盟企業以外にも採用キャリアは多い。
そのため、日本国内で成功したM2M/IoT機器やアプリを国外に展開しやすいこともドコモの強みと言える。国外キャリアの回線との接続がしやすく、海外でも同じプラットフォーム上でデバイス・データの管理等が行える。「無駄な投資なくグローバル展開が実現できる」(一矢氏)のだ。