――アカマイ・テクノロジーズはWebサイト/Webアプリケーションの高速化ソリューションを提供してきましたが、近年、インターネットの世界では急速にモバイルの存在感が高まっています。モバイルに特化したソリューションは何か用意しているのでしょうか。
サントス アカマイのモバイル戦略には2つの柱があります。1つは、ユーザーエクスペリエンスです。インターネットの世界は今、大変な激動の時代を迎えています。非常に多くの人々が移動体通信事業者のセルラーネットワークを介してコンテンツにアクセスするようになりました。こうした環境において、できるだけ良いユーザーエクスペリエンスを提供しようというのが私たちの第一の戦略です。
もう1つは、コンテンツプロバイダーへの情報提供です。ネットワークの状況やデバイスの種類など、コンテンツプロバイダーがユーザーに最も適したタイプのコンテンツを提供するうえで役立つ情報を提供しています。
言い換えると、パフォーマンスとインテリジェンス――。この2つがアカマイのモバイル戦略の柱となっています。
――具体的には、何を提供しているのですか。
サントス インテリジェンスから説明しましょう。モバイルの場合、ユーザーの状況は刻一刻と変化します。現在地や電波環境も変われば、同じセッションの間に3G/LTEとWi-Fiの間を行ったり来たりすることもあります。また、iPhoneのどのバージョンを使っているのか、どのディスプレイサイズのAndroidかなど、デバイスの種類によって何がサポートされているのかもまちまちです。
アカマイは、そのモバイルユーザーが現在置かれている状況やデバイスの種類など、コンテンツプロバイダーに対して数多くの情報を提供することができます。
――アカマイに頼らずとも、ある程度の情報は取得可能だと思いますが、何が違うのでしょうか。
サントス まったく違います。例えばWeb解析ツールが提供するのは、いずれにしても過去の履歴です。一方、アカマイの情報はリアルタイムにコンテンツ配信の最適化に活かすことができます。
デバイスの種類やOSのバージョン、解像度、ネットワーク状況、利用している通信事業者など、実に100種類以上の情報を我々はリクエスト毎に取得し、コンテンツプロバイダーに転送することができます。そしてコンテンツプロバイダーは、このリアルタイム情報をもとに最適なコンテンツをモバイルユーザーに配信できるというわけです。我々の典型的な顧客は、同じコンテンツについて8~10通りのレイアウトを用意しています。
――ブラウザやデバイスの種類などにより、レイアウトを変えることは従来から一般的でした。アカマイのソリューションを使うと、より詳細な情報をもとに行えるということですか。
サントス そうです。1つ良い例として、Androidのディスプレイサイズが挙げられます。通常は大画面のタブレットなのかミニ画面のタブレットなのかを判別することは難しいのですが、アカマイは別です。
また、セルラーネットワークの現在の状況を知ることもできます。アカマイは世界に13万台以上のエッジサーバーを設置していますが、エッジサーバーは移動体通信事業者のモバイルゲートウェイの隣に位置しており、エッジサーバーとモバイルデバイス間のラウンドトリップタイムを計算することで、セルラーネットワークの状況をリアルタイムに評価しているからです。
そこで例えば、ユーザーが地下鉄の中にいてネットワークの状況が悪い場合には、そのユーザーに送るコンテンツの中から重たい画像を外すといった調整が、コンテンツプロバイダー側で可能になるのです。