半導体技術の発展なくして、今日のICT社会は存在しえないが、その急速な進化を支えているのがEDAだ。EDAとはElectric Design Automationの略。半導体や電子・電気回路の設計を、コンピュータシステムを用いて自動的または半自動的に支援を行うこと、あるいはそのためのハードウェアやソフトウェアを意味している。
EDAを利用するユーザーは、携帯電話から航空機、人工衛星の分野まで多岐にわたる。アルデック社(http://www.aldec.com/jp/)は、その中でもFPGA(Field Programmable Gate Array)と呼ばれる最先端LSI関連の検証用ツールに特に強みを持っている。同社は2007年に100%子会社であるアルデック・ジャパンを設立。日本でも順調にビジネスを伸ばしているが、設立から5年を経た2012年、アルデック・ジャパンはネットワークに3つの課題を抱えるようになっていた。
アルデック・ジャパンのハイパフォーマンス・シミュレータ「Riviera-PRO」の動作画面。大規模FPGA、ASICのデザイン検証をサポートする |
「速度」「手間」「コスト」に課題
1つめはインターネット回線速度の遅さだ。
アルデックは、2012年からクラウドサービス「Aldec Cloud」(http://www.aldec.com/jp/solutions/functional_verification/aldec_cloud)の提供を開始している。Aldec Cloudは、クラウド上のコンピューティングリソースを使って、設計した半導体のシミュレーションが行えるサービス。シミュレーションには多くのコンピューティングリソースを必要とするが、Aldec Cloudは使ったサーバーの数と時間に応じて料金を支払う従量課金のため、自前で大量のサーバーを揃えなくても、必要なときに必要な分だけフレキシブルにコンピューティングリソースを利用できるのが特徴だ。
「Aldec Cloudは、Amazon Web Services(AWS)のIaaSを利用して提供しているが、従来のインターネット回線は速度が遅く、当社から米国オレゴン州にあるAWSのデータセンターとの通信する際に支障を来たすようになった」とアルデック・ジャパンのテクニカルディレクターである宮島健氏は話す。
アルデック・ジャパン テクニカルディレクター 宮島健氏 |
2つめの課題は、米国本社や欧州の開発拠点とのVPN接続設定が煩雑だったことである。それまでの同社のVPNではキャリアが提供するルーターを用い、WAN側にグローバルIPアドレスを割り当てる方式としては「PPPoE(Point to Point Protocol over Ethernet)」を使用していた。だが、PPPoEは、どういう設定の際にどういうコマンドを使うかまで理解しておく必要があり、難易度が高かったという。
最後の3つめの課題は、通信にかかるトータルコストの高さである。アルデック・ジャパンはAndroidスマートフォンを社員に配布していた。早い時期からテザリング機能を備えていたスマートフォンで利便性は高かったが、モバイルキャリアと固定キャリアとが別々であったため、社員間の通話にも料金がかかっていた。また、「テザリング機能を備えていたので採用したが、そのほかの機能はパッとせず、全体として優れたモバイル端末であるとは言えなかった」(宮島氏)という。