フォーティネットは2025年7月、量子コンピューターによる暗号解読の脅威に対応するため、同社の統合オペレーティングシステム「FortiOS」に量子安全機能を組み込んだと発表した。
新たに導入されたFortiOS 7.6では、FortiGate次世代ファイアウォールやセキュアSD-WANの利用者が、量子耐性を持つ暗号化や鍵配送の仕組みを追加費用なしで利用できる。
量子コンピューターは既存技術による暗号を短時間で解読できるとされ、通信や金融、行政、医療といった長期的に機密データを保持する業界に大きなリスクをもたらす。特に「HNDL(Harvest Now, Decrypt Later:今収集して後で解読)」型の攻撃手法が現実的な脅威とされている。
FortiOS 7.6に追加された量子安全機能は以下の通り。
・米国国立標準技術研究所(NIST)が承認したML-KEMや、BIKE、HQC、Frodoといった耐量子暗号(PQC)アルゴリズムの実装
・量子鍵配送(QKD)による暗号鍵の安全交換機能。主要ベンダーとの相互運用性を確保
・複数アルゴリズムを組み合わせる「スタッキング」による堅牢性向上
・既存の公開鍵暗号とQKDを統合するハイブリッドモードによる段階的移行
・管理画面の改良による量子安全設定の容易化
フォーティネットは、単一OS上にネットワークとセキュリティを統合する独自のアーキテクチャを強みに、最新技術を製品群全体に迅速に展開できる点を訴求している。同社創業者でCTOのMichael Xie氏は、「量子コンピューティングの進展に備え、企業がインフラを将来にわたって安全に運用できるよう支援する」とコメントしている。