日本HPは2012年4月24日、OpenFlowへの取り組みと、同社の新しいネットワークビジョンである「Virtual Application Networks(VAN)」に関する記者説明会を開いた。
「HPは今後、全世界的にOpenFlowを適用していく」(執行役員の杉原博茂氏)とOpenFlowへの積極姿勢をアピールする一方で、「VANが必ずしもOpenFlowを必要としているわけではない」(HPネットワーク事業本部長の大木聡氏)と、HPのOpenFlowに対する微妙なスタンスも垣間見える会見となった。
日本ヒューレット・パッカード エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 HPネットワーク事業本部 事業本部長 大木聡氏 |
16製品がOpenFlowを正式サポート
まずはHPのこれまでのOpenFlowへの取り組みを整理しよう。大木氏によると、HPは2007年からスタンフォード大学との共同研究を開始。2011年にできたOpenFlowの推進団体「Open Networking Foundation(ONF)」にも設立メンバーとして参加している。そして今年2月には、同社スイッチをOpenFlow対応にできるソフトウェアの提供を正式にアナウンス。HPが3com買収前から提供してきたProCurveシリーズの1Uのボックス型スイッチからシャーシ型スイッチまで16製品がOpenFlowをサポートした。
HPのOpenFlowへの取り組み |
「大型スイッチを使ったスケールのあるOpenFlowネットワークの検証もできる。HPのネットワーク機器を採用すれば、TRILLとOpenFlowのどちらもサポートしていけるというのが、我々のユニークな訴求ポイントだ」(大木氏)
OpenFlow対応ソフトウェアの提供を2月に正式アナウンス |
OpenFlowブームに“水を差す”?
ただ、その一方で大木氏は、昨今のOpenFlowブームに“水を差す”ともいえる、こんな指摘も行った。「OpenFlowを採用するか否かがお客様にとって重要なのではない。ゴールはOpenFlowの採用ではなく、属人的な作業を排除し、迅速なアプリケーションの導入を実現することだ」
OpenFlowやSDN(Software Defined Network)に注目が集まっている背景には、クラウド化が進展するなか、従来型のネットワークがボトルネックになっていることがある。例えば、仮想化環境では、新アプリケーションの導入に必要なコンピューティングリソースを瞬時に用意できる。ところが、これに伴うネットワークの設定変更となると、ネットワーク機器1台ずつにCLIで設定を行っていく必要があるため、数週間の時間を要してしまうのが現実だ。
従来型ネットワークの課題 |
対してOpenFlow/SDNでは、従来1台のネットワーク機器に統合されていたコントロール(制御)プレーンとデータプレーンを分離。コントローラ側で中央集権的にネットワークの制御を行うと同時に、物理的なネットワーク機器を仮想化してリソースプール化することで、迅速かつ柔軟なネットワーク変更を可能にする。
だが、「コントロールプレーンとデータプレーンを分けるのは、OpenFlowに限った話ではない」(大木氏)。
実は今回HPが発表したVANも、コントロールプレーンとデータプレーンの分離というアプローチにより、新アプリケーションの導入にかかる時間を劇的に短縮するものなのである。