NTTドコモは2024年6月、同社を代表企業とし、前田建設工業、SMFLみらいパートナーズ、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)で構成するコンソーシアムが、国立競技場の運営事業における優先交渉権者に選定されたと発表した。本格的に運営を開始するのは2025年4月からだ。
2019年12月に新たに開業した国立競技場の運営は、独立行政法人である日本スポーツ振興センター(JSC)が担ってきたが、運営の効率化や収益拡大を狙い、民間から事業者を公募していた。
ドコモらのコンソーシアムは、30年間の事業期間の運営権対価として528億円を提案。IOWN/6Gなどの最先端の通信技術の活用はもとより、スタジアム・アリーナ運営の実績とビジョンが評価されて落札した。
実はドコモは、スタジアム・アリーナ運営事業を5Gの商用化を目前に控えた2018年から手掛けている。高速・大容量の「5G通信と親和性の高いエンターテイメントやスポーツを組み合わせてビジネスを拡大していこうという機運が社内にあった」と、NTTドコモ エンターテイメントプラットフォーム部 担当部長の田中洋市氏は当時を振り返る。
NTTドコモ エンターテイメントプラットフォーム部 担当部長の田中洋市氏(左)と、同部 担当の井内律花氏
翌年の2019年には、東京五輪の競技会場となった有明アリーナの運営にコンソーシアムの構成企業として参加。これから運営していく国立競技場を含めると、すでに4施設の運営に携わっている(図表)。
図表 NTTドコモが運営に参画するスタジアム・アリーナ
海外ではスタジアムなどのイベント開催地を「ベニュー」と呼ぶが、「デジタルアセットとリアルをつないでエンタメ事業を発展させるためには、ベニューの運営に乗り出すのは必然だった」と田中氏は断言。そして、音楽・動画、スポーツなどのコンテンツビジネスは、「“ハコ”がないと運営していけない」と続ける。ユーザーのデバイスに価値あるコンテンツを届け、そのコンテンツのファンがリアルイベントに足を運ぶという循環の起点として、スタジアム・アリーナという場が不可欠なため、ベニュービジネスに進出したのだ。