ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の悪化など、世界中で地政学リスクが顕在化している。災害大国である日本においても、今後南海トラフ地震などの大規模災害が発生した場合、通信インフラが大きな打撃を受ける可能性は高い。
このような現状を踏まえ、「地上系ネットワーク(TN)だけでなく、空や宇宙からコネクティビティを担保できる非地上系ネットワーク(NTN)が求められる時代が来ている」と、2024年6月27日~28日にかけて開催されている、情報通信研究機構(NICT)の最新の研究成果を紹介する「NICTオープンハウス2024」の基調講演にて、NICT 理事長の徳田英幸氏は指摘した。
情報通信研究機構(NICT)理事長 徳田英幸氏
また、少子高齢化問題が深刻化するなか、「生活や産業などのあらゆる場面においてイノベーションを牽引し、我が国の社会経済が国際的な優位性を確保するための重要な社会インフラが必要だ」と説いた。
これらの課題解決に向けてカギを握るのが、「Beyond 5G/6G」「AI」「量子ICT」「サイバーセキュリティ」だといい、徳田氏はNICTの具体的な取り組みを紹介した。
“三次元ネットワーク”の構築目指す
Beyond 5G/6Gについては、低軌道(LEO)衛星やHAPS(成層圏通信プラットフォーム)、静止軌道(GEO)などの異なる軌道上のシステムを相互接続する「三次元ネットワーク」の実現を目指している。
特にNICTは、システム同士をシームレスにつなぐための大容量光通信基盤技術の開発に力を注いでいる。具体的には、SWaP(サイズ・重量・電力)を最適化した宇宙空間で動作可能な小型光通信端末や、同端末との通信が行える可搬型基地局などの研究開発を行っている。