スマートフォンで可能なのは「メール+α」に過ぎない
――ユーザー企業は、ネットワーク関連の新しいトレンド、技術をどう活用していくべきなのかについて、今回から2回にわたって聞いていきたいと思います。まず話題にしたいのは、スマートフォン/タブレットです。ユーザー企業の間でも、どう活用していけばいいのか、非常に関心が高まっています。
田崎 ガートナーでも実際、ユーザー企業からの問い合わせは増えています。今後さらにこの動きは加速していくでしょう。
――コンシューマ市場では、新規に販売される携帯電話の相当な割合がすでにスマートフォンになっていますが、同様のシフトは法人市場でも起こっていくのでしょうか。
田崎 企業もスマートフォンを選択せざるを得ないということだと思います。ただし、誰にでもスマートフォンを配布することにはならないでしょう。本当に業務に必要なのかどうかを見極めたうえで、選択的に従業員に提供していく形になると考えています。スマートフォンの場合、データ通信をあまり利用しないユーザーでもパケット定額への加入が必要になるためです。
――通信コストの増大に見合うだけの効果が実際に得られるのかどうか、企業は検証してから導入する必要があるということですね。他方、スマートフォンに対しては、業務効率や生産性の向上につながるという期待も大きいわけですが、この点についてはどう考えればいいですか。
田崎 モバイルデバイスの場合、画面サイズや処理能力などによって、できることが決まってきます。スマートフォンは、社内メールが使いやすいなど、メールデバイスとしては普通の携帯電話より優れているものの、あらゆる業務アプリケーションが動かせるわけではありません。スマートフォンで可能なのは、やはり「メール+α」の範囲です。つまり、スマートフォンを社員に渡せば、即、生産性が上がるということは期待できません。企業がスマートフォンの導入を検討するうえで、これは大前提といえるでしょう。
――では、スマートフォンの導入が効果的な業種や職種はあるのでしょうか。
田崎 外出が多く、顧客などと常にコミュニケーションする必要がある営業職は、確かに広く適用範囲といえます。ただし、必ずしもスマートフォンでなければならないかといえば、電話がコミュニケーション手段の中心ならば、通常の携帯電話でも構わないでしょう。
スマートフォンを有効に活用できる職種としては、定型のフォームに入力して記録するなどの作業が必要なフィールドワークが挙げられると思います。
――例えば保守サポート員の作業完了報告に利用したりですか。
田崎 そうです。携帯電話でもフォームへの入力作業などは可能ですが、スマートフォンのほうが画面が大きく、業務アプリケーションも載せやすいですから、より適しているといえます。PCよりも機動的ですし、カメラも搭載しているので、現場の写真を撮影して送るなどといった作業も容易に行えます。
――iPadなどのタブレットに関してはどう見ていますか。
田崎 タブレットについてもユーザー企業からの問い合わせは非常に多いです。ガートナーがユーザー企業に対し実施している調査でも、スマートフォンに対し興味を持っていると回答した企業の比率が49%、タブレットは50%という結果が出ています。直近ですぐに使えるアプリケーションというと、営業ツールとしての使い方が挙げられるでしょう。電子カタログのような情報提供型の使い方が今の時点では一番有効だと思います。