昨年、携帯電話の業界団体GSMAはあるタスクフォースを立ち上げた。GSMに採用されてから20年近くが経過したSIMカードの用途を再度見直すことが目的だ。このタスクフォースには、AT&T、チャイナモバイル、ドイツテレコム、フランステレコム(オレンジ)、KT、NTTドコモ、SKテレコム、テレコムイタリア、テレフォニカ、ベライゾンワイヤレス、ボーダフォンなど、世界の主要通信事業者が参加している。
同タスクフォースが検討しているのは、デジタルカメラや音楽プレイヤー、車内システム、スマートメーターなどのエンベデッドデバイスへのSIMカードの内蔵だ。最近、Wi-Fiを搭載するコンシューマデバイスなどが増加しているが、「いつでもどこでも」という観点では、やはり3Gのほうが適している。すなわちこれは、いわゆるM2M分野への3G普及を狙った動きなのである。
このエンベデッドデバイス用のSIMカードが通常のSIMカードと大きく違うのは、OTA(Over The Air)などにより、遠隔からSIMカードのアクティベーションが行える点だ。そのため、特定の携帯電話事業者に紐付かないSIMカードを組み込んでおき、後からアクティベーションを実施することができる。
ソウル在住の人が秋葉原でSIMカード内蔵の3G対応デジカメを買って帰国したとしよう。NTTドコモなどの日本の携帯電話事業者にSIMカードが紐付けられていては、このデジカメの3G機能は何の用も足さない。しかし、携帯電話事業者との紐付けは後で行えばいいとなれば話は別だ。韓国に帰国後、好きな携帯電話事業者と契約すればいい。エンベデッドデバイス用のSIMカードは、M2M分野で3Gを普及させるうえで重要なカギを握っているのである。
GSMAは2月14日、エンベデッドデバイス用SIMカードの標準化に向けた市場条件を決定したと発表した。今後、標準化団体のETSIに提案し、標準規格の策定を図っていくとのことだ。