【CEATEC JAPAN 2010】田中新社長が語ったKDDIの新ビジョン

KDDIの新社長、田中孝司氏がCEATEC JAPAN 2010のキーノートスピーチで講演。KDDIが目指す新しいビジョンを語った。

KDDI社長に12月1日付で就任予定の田中孝司代表取締役専務が2010年10月8日、CEATEC JAPAN 2010で講演した。社長内定後、初めてとなる講演で田中氏が語ったのは、スマートデバイス、マルチネットワーク、クラウドの3つを基盤とするKDDIの新ビジョンだ。

田中氏は冒頭、今回の講演の内容について「KDDIの戦略というより、個人的にやっていきたいと思っていること」と説明した。理由は「大会社でもあり、今後、軌道修正がある場合があるため」だが、同時に「社員の皆さんがサポートしてくれれば、今日お話しすることが現実にできるのではないか」とも語り、ビジョンの実現に意欲を見せた。

田中氏はまず、移動通信分野ではスマートフォンやタブレットなど「これまで我々が経験したことのないほど多種多様なネットワークデバイス」が登場していることに言及。KDDIが今年本格参戦したスマートフォンについては、その普及が「KDDIが社内で考えている数値よりもっと上ブレする」という見方を示し、その登場をインターネットの爆発的な普及の契機となったWindows 95搭載PCの出現に比肩し得る「次の時代の最初の兆候」だと述べた。すなわち、高機能携帯電話の多くがスマートフォンに置き換わり、携帯型だけでなく多様なデバイスが登場、これらのスマートデバイスの爆発的な普及によって新たな市場が出現し、産業自体が一段のブレークを果たすというのである。

スマートデバイスの爆発的普及が新しい市場を切り開くと田中氏
スマートデバイスの爆発的普及が新しい市場を切り開くと田中氏

一方、田中氏は、使い勝手がよく処理速度の高いスマートフォンでは、既存の携帯電話の10倍にも及ぶトラフィックが発生、ネットワークリソースを食い尽くすことになるとも指摘。これにどのように対処していくかが、変化をビジネスチャンスに変える鍵となると語った。こうしたトラフィックの爆発的な拡大は欧米の通信事業者の間で「データ津波」と表現されているという。

田中氏は「米国では2015年までに300MHz幅、2020年までに500MHz幅を新たに割り当てる計画だが、これでもスマートフォンのトラフィックは吸収しきれない」としたうえで、スマートフォンの本格展開にはWi-Fiやフェムトセルなどを用い、トラフィックをオフロードすることが不可欠だと話した。特に3Gの70分の1とコストの安いWi-Fiに期待しているという。さらに、UQコミュニケーションズのWiMAXや、2012年に導入するLTE、FTTHやCATVなどの固定系ネットワークとの連携を図る必要があるとも強調。これらを有機的につなげることで多彩な回線サービスを持つKDDIの強みを生かした「最強のマルチネットワーク」を構築していく考えを示した。

固定系を持つKDDIの強みを生かし「最強のマルチネットワーク」を整備
固定系を持つKDDIの強みを生かし「最強のマルチネットワーク」を整備

デバイスについては、これまでの携帯電話にすべての機能を搭載するという流れから、専用のデバイスをTPOに応じて使い分けるようになるのではないかと述べた。そのうえで、これらの端末に対して、クラウドにより様々なサービスが提供されるようになるとして、高速性やレスポンスが重要になるとした。クラウドについては教育や医療といった新たな分野での活用も期待できるという。また、クラウドサービスを連携させることや、端末などに埋め込まれたセンサーの情報をワイヤレスブロードバンドでクラウドに吸い上げることで、新たなサービスの可能性が生じると指摘。こうした多様なクラウドのサービスを手近なデバイスで使える「マルチユース」といえる利用形態が一般的になるという見通しを示した。

さらに田中氏は、この「マルチデバイス」「マルチネットワーク」「マルチユース」の3つが次のKDDIのビジネスの基盤になるとし、その基盤上で新たなビジネスモデル、例えばパッケージ型料金やKindleのようなコンテンツ料金ですべてを賄うようなものなどを展開できるようにしていく必要があるとした。

次世代のビジネスモデルはマルチデバイス、マルチネットワーク、マルチユースの3つを基盤に成立
次世代のビジネスモデルはマルチデバイス、マルチネットワーク、マルチユースの3つを基盤に成立

最後に田中氏は「こうした新しい時代のビジネスでもKDDIは当然そのプレイヤーでありたいし、我々以外の業界の方々が世界に向かって一緒に歩めるようになればと考えている。それを通じ国力が弱ってきたといわれる日本の明るい未来を作っていきたい」と述べ、講演を締めくくった。

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