――TCA(電気通信事業者協会)が発表する携帯電話の契約純増数で、auはこのところ低迷しています。
湯浅 マーケットや周辺環境が大きく変化しており、従来型の携帯電話だけで勝負することは厳しくなっています。そうした中で、当社はスマートフォン、デジタルフォトフレーム、データ通信カードで他社に先行されていました。今年度中にも品揃えでキャッチアップし、一気に反撃に移る体制を作ることが最大のテーマです。
――スマートフォンに関しては、6月下旬に「IS01」「IS02」の発売を予定しています。
湯浅 以前はスマートフォンといえば“とんがった”ユーザー向けでしたが、今では完全にコモディティ化しており、携帯電話購入時の選択肢の1つになっています。スマートフォンが成長過程に入って来たという気がしており、マーケットが広がるこのタイミングを逃さないよう、我々も新製品を投入しました。
IS01とIS02はインターネットを楽しむ方をターゲットに、ケータイにプラスして2台目としての利用を想定した仕様や料金プランとなっています。今年の秋冬商戦ではワンセグやおサイフケータイ、赤外線機能などを搭載した日本仕様で、1台目として携帯電話からも気兼ねなく移行していただけるスマートフォンを投入する計画です。
――iPhoneは端末だけでなく、アプリの魅力が人気につながっているといわれます。
湯浅 アプリやコンテンツで差別化しても、いつかは他社に追いつかれてしまいます。むしろ、「面白く操作できる」「楽しみながら使える」ことが重要であり、UIとデザインの争いになると見ています。
AndroidのUIはそのままでは面白くないので、IS01はスウェーデンのオーシャンオブザベーションに依頼した独自仕様のUIを採用しており、使ったときの心地よさにこだわっています。他社で予定している同等モデルと並べて使ってみると、UIがまったく違うことに気づくはずです。
――スマートフォンがコモディティ化することで、携帯電話とのすみ分けはどうなっていくと思われますか。
湯浅 今後、スマートフォンも携帯電話のようにハイエンドからローエンドまでバリエーションが広がる可能性が高いと思います。販売台数が増えれば、価格も下がってくるはずです。そうなったときに、携帯電話とスマートフォンの区別がなくなるのではないかと予想しています。
我々も今はオープンプラットフォームに日本仕様の機能を搭載したスマートフォンを出していますが、「通話とメールで十分」というユーザーがいれば、余分な機能を省いた「簡単ケータイ」のスマートフォン版のような商品を出すかもしれません。
――スマートフォンの普及が進むと、通信事業者はネットワークを提供するだけの役割になってしまうとの懸念があります。
湯浅 そうならないためにも、当社では「Android Market」とは別に「au one Market」というポータル的な入口を作っています。Android Marketは急速な拡大が見込まれていますが、英語のアプリが多数あるなか、日本人が目的のアプリを探し出すのは至難の技です。しかもオープンOS端末はPCと同じで、セキュリティの問題もあります。
au one Marketでは、「LISMO」をはじめEZサービスで培ったノウハウを活かして日本人にお薦めのアプリを紹介しています。セキュリティについてはコンテンツプロバイダーとしっかりチェックをしています。さらに、Android Marketはクレジットカード決済ですが、PCにカード番号を入力することに不安を感じる方もいるので、auの通信料金と一緒に支払いができる「auかんたん決済」も開始しました。
また、7月1日付けでソニーや凸版印刷、朝日新聞社と一緒に電子書籍配信の事業企画会社を設立します。当社でも電子書籍端末を年内に開発する予定です。プラットフォームはオープンになっても、その上のアプリケーションや端末を提供することができれば、通信事業者が単にネットワークを提供するだけの役割になることはないと思います。