「発信」「気づき」「つながり」で組織の壁を打ち破る《2-3》ソーシャルテクノロジーがもたらすものとは――NTTデータ流ソーシャルテクノロジー

「Twitter」や「SNS」に代表されるソーシャルテクノロジーが、企業でも使われ始めた。厳しい経営環境を乗り切るために、組織へ組み込み、コミュニケーションの活性化に役立てようとする企業も現れている。本連載では、2009年のダボス会議で「持続可能な100社」に選ばれたNTTデータの取り組みを中心に、ソーシャルテクノロジーのメリットから活用のポイントを分かりやすく紹介する。

2.3.2 人を探す

企業がソーシャルテクノロジーを適用して得られる第1の効能は「人を探す」です。

企業内には、特定分野の知識・経験に長けた社員が大勢いるものです。業務上や個人的な課題が発生した際、そうした社員に部門の壁を超えて気軽に助言をもらえるなら断然仕事がしやすくなります。ソーシャルテクノロジーは、そうした人脈ネットワークを全社員が標準的に利用できるWeb上の仕組みとして提供します。

ソーシャルテクノロジーは、あくまで“人”に注目します。従来から多くの企業で知識の共有・伝承は意識され、専門システムを構築する企業もありました。ただし、従来のアプローチが“人”と切り離された知識の集積を目指していたのに対し、ソーシャルテクノロジーは、知識・経験・思いを持つ“人”同士のつながりを活性化させることに重点を置いています。要するに、いわゆる“ノウフー”(Know-Who=“ノウハウを知る人”を知る)の仕組みとなります。

第3章で取り組みを紹介するNTTデータの社内SNS「Nexti」もノウフーの側面から活用されています。詳細は次章に譲りますが、Nexti上の公開プロフィールや仲間リンクなどから、その分野のエキスパートを探し出し、業務課題解決を図っている例が多く見られます。

また、個人的な悩みの解決でも効力を発揮しています。通常、社内で悩みを相談できる人は相当に限られますが、Nextiを利用すれば、様々な人に相談できるようなります。例えば、「経験者採用」「女性」など同じ共通点を持つ社員同士の交流を支援するコミュニティがあり、その中でつながっている社員間で悩みを相談するといった状況も生まれています。さらに、少し変わったところでは、人事採用活動にOB・OGとして参加する社員が、訪問してくる学生に対してNTTデータで働くことの魅力を多角的に伝えるため、Nextiを使って種々の経験を持つ人を探した例もあります。このようにソーシャルテクノロジーの「人を探す」機能は、企業活動の様々な局面で活用されます。

2.3.3 ムダの効用

ソーシャルテクノロジーを適用して得られる第2の効能は「ムダの効用」です。前述した通り、現在の企業はムダを徹底して排除することを指向していますが、あえて、ムダを取り戻して活かしていくわけです。

トップダウンで決めた業務を効率良く遂行する組織であれば、特に社員間のコミュニケーションに気を遣う必要はないかもしれません。ただ、変化の激しい時代に対応するために一人ひとりの社員が頭をフル回転させて働く組織を目指すのなら、社員間のコミュニケーションは必須です。日ごろから社員同士が自由かつ濃密にコミュニケーションを取り合い、各々が人脈や知識を広げ、考える力を養っていれば、いざ課題に遭遇した時に対応力が違います。

自由なコミュニケーションでは当然、当人たちの担当業務と関係のない話題や雑談、趣味の話などが含まれます。一見すると“ムダ”が多いようにも思えますが、これを制限しないことです。NTTデータではNextiを社内に導入する際、ユルい雰囲気を持つコミュニケーション環境を作ることを目指し、社員には「NextiはWebを使った喫煙室、給湯室のようなもの」と説明しました。具体的にどのように使われ、どのような効果をもたらしたか。その経験に基づいた「良きムダとは何なのか」については、後の章で考察します。

2.3.4 スピード

第3の効能は「スピード」です。現代を象徴する言葉であり、従来のITでも重要な効能ですが、ソーシャルテクノロジーの場合、使い方・運用の工夫により、現場の問題解決スピードがアップします。

例えば、「形式ばらず」「気張らず」をコンセプトにしたNextiのQ&Aコーナーは、気軽に質問を投げ掛け、それに応じる側も気楽に答えられるよう工夫を凝らしています(詳細は第3、4章を参照)。今、問題を抱えている質問者は、時間をかけた100点満点の回答より、65点程度の回答でも良いから、問題解決のヒントをなるべく迅速に得たい、答える側もヒント程度なら答えられるという場合が多々あります。そうした双方の思いを満たす場として機能しています。このようにサービスの位置付けによって、問題解決のスピードは変わってきます。

その他、Nextiは“ちょっとした思い付き”を発信する場所としても活用されています。部門間の正式な手続きを必要としないため、部門を超えた社員間でアイデアを交換したり、相談し合うことが容易になりました。特に社内人脈のない社員でも、所属部門を超えたコミュニケーションが可能になりました。その結果、全般的に社員の働き方にスピード感が出てきています。

ソーシャルテクノロジーは、ITに包含されるひとつの要素でありながら、その活用方法は従来とは一線を画しています。また、企業内適用事例も少ないため、効果の具体的イメージも広く認知されているとは言い難い状況です。そこで、NTTデータがNexti導入・運用の中で上記の3つの効能をどのような形で実現してきたのかを、続く第3、4章で詳しく紹介していきます。

(連載目次はこちら

NTTデータ流ソーシャルテクノロジーNTTデータ流 ソーシャルテクノロジー
~「発信」「気づき」「つながり」で組織の壁を打ち破る~

■Nexti運営メンバー有志(著)
■新書版 132ページ
■定価:1,050円(税込)(本体:1,000円)
■ISBN:978-4-89797-843-7

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本連載は、2010年1月にリックテレコムから発行されたソリューションIT新書『NTTデータ流ソーシャルテクノロジー ~「発信」「気づき」「つながり」で組織の壁を打ち破る~』(著者・Nexti運営メンバー有志)を転載したものです。

株式会社NTTデータ ビジネスソリューション事業本部
2003年、NTTデータ入社。2006年当時、社内の情報共有に強い問題意識を抱き、Nextiの一員となる。その経験を活かして理論と実践を求める企業の社内コミュニケーション改善プロジェクトに多数参画。Nextiのこころざしの灯を伝えながら、各企業のムーブメントをその企業の社員とともに盛り上げてきた。現在は、クライアントのEコマース事業の戦略立案に携わる。
一貫したミッションは、数多ある噛み合わない議論を噛み砕き、新しい観点を発想・提示し、目標の明確化に貢献することである。

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