6Gの消費電力を8割削減 KDDI総研が基地局クラスター化で

Beyond 5G/6Gにおいて課題となるのが通信インフラの消費電力だ。従来より多くの基地局が必要となり、消費電力の削減が欠かせないからだ。KDDI総合研究所は、基地局のクラスター化で6Gの電力問題の解決を図ろうとしている。

KDDI総合研究所は2022年1月31日、Beyond 5G/6Gに向けた基地局制御技術の「AP Cluster(エーピークラスター)化技術」を適用した実証環境において、世界で初めてエンドトゥーエンド(E2E)での通信に成功したと発表した。
AP Cluster化技術は、その名の通り複数の基地局(AP)をクラスター化させ、仮想的に1つの基地局として扱い制御する技術だ。

KDDI総合研究所では従来から、Beyond 5G/6G時代に向けて、複数の基地局アンテナを連携させて各ユーザーの無線品質を最適化する「Cell-Free massive MIMO」技術を開発していた。これは基地局を分散配置したうえで連携させ、基地局同士の干渉や遮蔽物による影響を抑える仕組みである(参考記事:2つの「世界初」技術、KDDI総合研究所がBeyond 5G/6Gに向けて)。

AP Cluster化技術を適用したネットワーク構成
AP Cluster化技術を適用したネットワーク構成
ただ、Cell-Free massive MIMO技術は通信品質を高められるというメリットがある一方で、「複数の基地局から得られた情報を計算するため、計算量が膨大になるという課題があった」とKDDI総合研究所 次世代インフラ2部門 電波応用グループ グループリーダー 新保宏之氏は明かした。1つ1つの基地局から無線情報などを集約基地局(CU)が収集し、制御する必要があったためだ。
KDDI総合研究所 次世代インフラ2部門 電波応用グループ グループリーダー 新保 宏之
KDDI総合研究所 次世代インフラ2部門 電波応用グループ グループリーダー 新保宏之氏
計算量が増えるということはサーバーリソースが必要になるということであり、消費電力も増加する。この弱点を克服するため、KDDIはAP Cluster化技術を開発。今回、複数の基地局をグループ化して効率化することに成功した。Cell-Free massive MIMO自体は世界中で検討されている技術だが、AP Cluster化技術を適用しながらE2Eで通信した取り組みは世界初だという。

APクラスター化技術の概要
AP Cluster化技術の概要
KDDI総合研究所は、5G通信システムを用いた実証環境でテストを実施。「4台の基地局と2台の端末を配置した実証環境で、サーバーと端末間でE2Eで通信を行った。結果としては通信品質を落とすことなく、サーバーリソースの削減ができた」と新保氏は説明した。 また、「シミュレーターを用いて、基地局数が400台、端末数が100台の環境をテストしたところ、計算量は21.8%と約1/5にまで縮小できた」という。
APクラスター化技術の実証の様子
実証実験の様子
今後の展望については次のように新保氏は語った。「これらの消費リソース削減は無線部分のみの成果になるため、光伝送技術と組み合わせてネットワーク全体を効率化していきたい。今後は、APクラスター化技術をより高度に展開できる方式も検討する。2028年以降に実現が目されているBeyond 5G/6Gでの実装を見込んでいる」

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