5Gのインフラ整備が本格化してきた。
5Gでは1GHz帯以下のローバンド、1GHz帯~6GHz帯のミッドバンド、24GHz帯以上のハイバンド(ミリ波)を利用して、既存基地局または新規に基地局が展開されるといわれる。こうした5G基地局への電力供給には莫大な費用がかかる。仮にそのコストを1~2%削減、あるいは電源工事に必要な期間を1日か2日、短縮できれば、大幅な経費節減が可能となる。
加えて、災害の多い日本では、信頼性の高いバックアップ電源の確保も基地局の整備を進める上での課題となる。
米国の通信インフラベンダー、コムスコープは、こうした電力供給への5Gのニーズに応えるには、2つの問題を解決する必要があると見ている。
その1つが、マクロ基地局でのRRUへの供給電圧降下だ。
RRUへの供給電圧をダイナミックに調整5Gのインフラ整備はまず、コンクリート柱やビルの屋上、鉄塔などの既存の基地局ロケーションに、5Gの無線設備を増設する形で進められている。
5Gでは鉄塔局無線装置(5GではRUと呼ばれるが、ここでは4Gの無線装置を含めてRRUと表記する)とアンテナを鉄塔の上に設置し、光ファイバーで地上のベースバンド装置との間を結ぶ形をとる携帯通信会社および局がある。
海外ではこのソリューションが一般的であり、日本国内でも定期点検のルールが今後変更となり、このソリューションが一般的となる可能性がある。
また、ビルの屋上局ではビル屋上の4角に無線装置とアンテナを設置し、光ファイバーで屋上の一か所に設置している光終端箱やWDM装置との間を結ぶ形をとる局がある。
ここで問題となるのが、5GのRRUが必要とするDC(直流)-48Vの電源をどうやって供給するかだ。
地上またはビル屋上のシェルター内に設置されている電源装置はAC(交流)100V/200Vの商用電源をDC(直流)-48Vに変換して、鉄塔上部またはビル4角のRRUに送り出す。この時電源装置とRRUを結ぶ電力ケーブルは、時に40m以上にも及ぶが、その導線抵抗により数ボルトの電圧降下が生じる。
5GのRRUは電圧が-43Vまで降下しても動作するので、平時はこれでトラブルが生じることはない。
問題となるのは災害などで停電が発生し、電源が非常用バッテリーに切り替わった時である。
非常用バッテリーは、満充電であれば-48Vで電力の供給が可能だ。しかし、放電が進むにつれて、電圧が降下していく。仮に電力ケーブルで5Vの電圧降下が生じると、バッテリーの電圧が1V下るだけで、RRUの入力電圧が-43Vを切って停止してしまう。バックアップ時間が極めて短くなってしまうのだ。
この問題の対処方として一般的なのが、導電抵抗の少ない太い電力ケーブルを選択することだが、太いケーブルは高価である。重量もかさむため鉄塔やビル屋上への負荷も大きくなる。5Gの進展により、多くの無線装置が設置・追加されることを考えれば、ケーブルの重量はできるだけ抑えたいところだ。
高性能・大容量のバッテリーを採用して、放電による電圧降下を抑えることも解決策の1つだが、この場合も多くの追加コストが必要となる。
こうした課題を抜本的に解決するソリューションとしてコムスコープが展開しているのが「PowerShift Macro(パワーシフト マクロ)」だ。電力ケーブルのサイズや距離などに合わせてRRUに最適な入力電圧を自動(あるいは手動で)設定して、供給するマクロ基地局用の電源装置である。
PowerShift Macroは、商用電源が使えなくなり非常用バッテリーに切り替わると、バッテリーの出力電圧をDC-DCコンバータで調整してケーブルでの電圧降下を補償、RRUに適した入力電圧で電力を供給する。
放電によってバッテリーの出力電圧が低下すると、より大きく調整をかけることでバッテリーに蓄積されたエネルギーを最大限に活用する。これにより、非常用バッテリーの駆動時間を最大50%延長できる。
PowerShift Macroを使えば、商用電源での利用を前提とした細い電力ケーブルで、非常用バッテリーでの稼働が可能であるため、設備コストの削減が可能になる。
また、将来的にRRUの追加が必要となった場合、これまでに比べて容易なRRUへの電力ケーブルの拡張が可能である。
97.7%という高い電力効率もPowerShift Macroの魅力だ。
1RUのラックスペースに収容できる小型の機種でも、最大12台のRRUへの電力供給が可能だ。
RRUあたり2000Wの出力が可能な機種もラインナップされており、消費電力の大きなミリ波のAAU(RRU一体型アンテナ)などに十分対応できる拡張性も有している。