イチからわかるネットワーク時刻同期

5Gの普及等を背景に、通信ネットワークにおける時刻同期の必要性が高まっている。リアルタイムアプリの安定運用に不可欠なこの時刻同期は、どのような仕組みで実現されるのか。その基本から解説する。

ソリューション選定のポイント「5G基地局用に小型GMも PTPは精度維持が肝に」タイムサーバー/GMCは、図表5のように多様な製品がリリースされており、処理性能や収容できるスレーブ装置の数、PTPの場合はホールドオーバー機能の品質等に応じて適切なモデルを選択すべきだ。

図表5 主要なタイムサーバー製品の一覧

メーカー/販売元 製品名 概要 特徴 参照用URL
Oscilloquartz OSA 5401 ネットワーク機器のSFPポートに挿入し、GMCやBC 機能を実現 PTP対応 【東陽テクニカ】
https://www.toyo.co.jp/ict/maker/detail/ADVA.html
OSA 5405 GNSSデュアルアンテナ、受信機、GMCの一体型
OSA 5412/5422 PTP 対応。NTPキャパシティを強化した新モデル
Orolia Satellite Time & Location (STL) 独自のイリジウム衛星により、GPS/GNSS 衛星信号に依存せず位置 および時間データを提供する 配信サービス 【東陽テクニカ】
https://www.toyo.co.jp/ict/products/detail/stl.html
セイコー ソリューションズ Time Server Pro. TS-2950 PTPとNTPに対応。利用シーンごとにオシレーター、PTP Profile、時 刻源 /周波数源、物理インタフェースを選択できる PTP対応 https://www.seiko-sol.co.jp/products/time_server/
Time Server Pro. TS-2910 テレコム(LTE/5G)や IoT(TSN)など広域配備型の小型 PTPグランド マスター。屋外設置型も用意 PTP対応
Time Server TS-2560 電源二重化にも対応の新ハイエンドモデル NTP
セイコータイムマネージド サービス光 TJJY 「光テレホンJJY」対応のタイムサーバー、回線等をワンストップで提 供するサービス。オプションでリモートサポートも 配信サービス
セイコークローズド モバイル NTP 閉域モバイル網経由で利用できるNTP 配信サービス
Microchip SyncServer S600 / S650 大量の NTPリクエストに高速に応答。準天頂衛星システム(QZSS)か らの時刻取得にも対応 大規模向け
PTP対応
【丸文】
https://www.marubun.co.jp/product/system/a7ijkd00000004ec.html
Time Provider TP4100/TP5000 IEEE1588v2 Telecom Profile 準拠。TP5000 はホールドオーバー機能 にOCXOまたはルビジウムを選択可能 PTP対応
Trimble GM200 小型・軽量なPTP GMC。TSN(Time Sensitive Network)IEEE802.1ASに対応 PTP対応 【原田産業】
https://infocom.haradacorp.co.jp/time-synchronization/gm200
シチズン TIC GPSタイムサーバー TSV-500GP ネットワーク機器への時刻基準の提供に特化した SNTP※サーバー。 扱いやすさとリーズナブルな価格が特徴 小型 https://tic.citizen.co.jp/timeserver/
タカコム GPSタイムサーバ TSG-100 NTP/SNTP 対応。GPS 受信アンテナとサーバー本体が一体構造で、 アンテナ工事が不要 アンテナ
一体型
https://www.takacom.co.jp/product/1233

※シンプル NTP、NTPの簡易版

また、5G基地局やエッジサーバーを運用する通信局舎のように、一般的なデータセンターとは異なる環境に設置する場合は、製品の形状や耐環境性への配慮も重要になる。最近では、データセンター等で用いるラックマウント型だけでなく、5G基地局や列車/車両等での利用に適した小型・軽量モデル、GNSSアンテナ一体型のGMCも出てきている。

例えば、東陽テクニカが販売する米ADVA社Oscilloquartz製「OSA 5405」は、GNSSアンテナを内蔵した小型GMCで、PoE受電にも対応する。SFPプラグ型の「OSA 5401」もあり、スイッチのSFPポートに挿入するだけで、GMCやBC機能が使える。

NTPサーバーはマネージドで

NTP時刻同期の場合は、タイムサーバーを自前で導入・運用するという選択肢以外に、マネージドサービスを利用する手もある。

例えば、セイコーソリューションズはNICTの光テレホンJJYを利用するための設備一式(タイムサーバーやルーター等)を貸し出し、ひかり電話データコネクトの回線契約、機器の設定・保守をワンセットにした「タイムマネージドサービス光TJJY」を提供。閉域モバイル網経由で同社の時刻配信センターと同期した時刻情報を配信する「クローズドモバイルNTP」も用意している。

同社 戦略ネットワーク本部 タイミングソリューション営業部長の鈴木康平氏は、「インターネット経由のNTP時刻同期はDDoS攻撃等のリスクがあり、できれば避けたほうがいいが、タイムサーバーやアンテナの設置・運用が負担になるケースも多いことから、閉域網を使ったこれらのサービスを始めた」と話す。自前運用に自信がないユーザーにとっては有用な選択肢となろう。

PTPには試験・計測も不可欠

PTP時刻同期環境の構築・運用には、同期性能の試験・計測体制も必要だ。

丸文 システム営業第1本部 営業第2部 測位タイミング課 課長の作間敬史氏によれば、「GNSS信号はアンテナがなければ取れないので、その模擬信号を出してPTPパケットを解析するシミュレーターや計測器を使えば、(設置前に)GMCの精度測定やBC/TC、5G基地局の性能検証も可能だ」。同社は、こうした一連の試験環境構築もサポートしている。

また、5Gネットワークの同期運用では、各所に点在する基地局・エッジ基盤での性能検証やトラブルシューティングに対応するため、持ち運びが可能なポータブル測定器の必要性も高まる。通信インフラ向け測定器を提供しているアンリツは、LTEで3.5GHz帯TDDが導入された頃から同社の測定器に時刻同期の検証・解析機能を追加して、この需要に対応してきている。同社 通信計測カンパニー ソリューションマーケティング部 課長補佐の亀山祥弘氏は、「5Gで精度がより厳しくなった以上に、検証内容のバラエティも増えた。フィールド作業を考慮すれば、屋外や電源のない場所でも使えるポータブルな高性能測定器が不可欠だ」と話す。

同社では、マルチGNSS対応で、さらに原子時計を搭載したホールドオーバー対応の測定器「MT1000A」を提供するのに加えて、インターネット経由で計測データを遠隔地と共有し、ベテラン技術者が現地作業員をサポートするためのクラウドサービスも用意している。

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セイコーソリューションズ株式会社
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株式会社東陽テクニカ
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古野電気株式会社
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アンリツ株式会社
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月刊テレコミュニケーション2021年12月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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