<特集>5Gインフラ ディープガイド5G網をAWS/Azureへ パブリッククラウドへ引越し始まる

キャリアネットワークの仮想化/クラウド化が新たな段階へ突入した。AT&Tをはじめ、パブリッククラウドへ5Gコアを移行する通信事業者が出てきている。キャリアインフラの在り様は、どう変わっていくのか。

キャリアネットワークもいずれパブリッククラウドで動かすのが当たり前になるかもしれない──。ETSI(欧州電気通信標準化機構)でNFVの仕様化がスタートした2010年代前半には想像でしかなかったことが、今や現実になろうとしている。これまでオンプレミス/プライベートクラウド環境で構築・運用してきたモバイルコアを、AWSやMicrosoft Azureへ移行する通信事業者が次々と出てきた。

AT&Tが5GコアをAzureへAWSで5Gネットワークを構築している例としては、5Gを機にMNOとして新規参入した米Dish Network(以下、Dish)、南米最大級の携帯電話事業者であるTelefonica Vivoが挙げられる。アマゾン ウェブ サービスでコネクティビティ サービス担当ジェネラルマネージャーを務めるキラン・エダラ氏によれば、欧州でも「Swisscomが、自社施設やAWS Outposts、2022年後半にスイスで開設を予定しているAWSの新リージョンを活用して、5Gネットワークのハイブリッドクラウドアーキテクチャへの移行を検討している」という。

北米ではAT&Tが6月末日、商用運用中の5G/4GネットワークをAzureに移行すると発表した。5Gコアの移行から始めるとしており、今後RANやMEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)もAzureプラットフォームへ移していくと見られる。

このほかVodafone、T-Mobile、Verizon Business、Deutsche Telekom、Telefonica、Telstra、NTT等もマイクロソフトの通信事業者パートナーであり、AT&Tのように5Gコアの移行まで公表する例はまだないものの、多くの通信事業者がAzureのテクノロジーを活用する。日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 通信メディア営業統括本部 インダストリーエグゼクティブの大友太一朗氏は「5Gは大きなポテンシャルのある領域。通信事業者のコスト効率化や収益源創出を支援するビジネスに力を尽くしていきたい」と話す。

日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 通信メディア営業統括本部 インダストリーエグゼクティブ 大友太一朗氏
日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 通信メディア営業統括本部
インダストリーエグゼクティブ 大友太一朗氏

5GコアからRAN、MECまで代表例としてDish、AT&Tのネットワーク構成と運用形態を確認しよう。

Dishはノキアのクラウドネイティブ5Gコアを用いて、AWS上で5Gネットワークを構築した。同社はO-RANの展開にも積極的で、DU/CUにマベニアやアルティオスター、RUには富士通を採用するなどマルチベンダー構成で5Gネットワークを展開している。

米国内に数カ所あるAWSのRegional Data Centerで5GコアとOSS/BSSを大規模運用し、各地に点在するLocal Data Centerでユーザーデータを転送するUPFおよびDU/CUを運用。5Gデータ処理、サービス提供に、AWSが提供するコンピューティング、コンテナ、IoT、機械学習、セキュリティ等の機能を利用する。

また、リアルタイム性の高い5Gユースケースをネットワークエッジでサポートするため、「AWS Local ZonesとAWS Outpostsを活用する予定」(エダラ氏)だ。

AWS Local Zonesは、エンドユーザーの近くにAWSインフラをデプロイするサービスで、ボストンやダラスなど数カ所に展開されている。10ms以下の低遅延を必要とするアプリケーションを実行するためのもので、リアルタイムゲームやライブビデオストリーミング、機械学習の推論といった用途に適する。

AWS Outpostsは、AWSのサービスをユーザーのオンプレミス環境で実行するためのマネージドサービスだ。AWSが設計し、ソフトウェアを搭載したハードウェアを顧客企業のデータセンター等に設置し、運用管理はAWSがリモートで行う。ユーザーはAWSと同じAPIやツールを用いて操作することが可能だ。

このようにDishは複数のAWS インフラ/サービスを組み合わせることで、MECサービスや、特定業種・企業向けプライベート5Gの提供も可能なネットワークを展開していく計画だ。将来的には、「AWSの機械学習機能をネットワークエッジに適用し、特定の場所でのネットワークの混雑を予測したり、ネットワーク機能の異常を認識したりして、パフォーマンスを最適化するための修正措置を自動で行い、サービスの向上につなげる予定」(エダラ氏)という。

月刊テレコミュニケーション2021年9月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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