<特集>ローカル5G NEXT免許不要の5G「NR-U」実用化の可能性

2020年に標準化が完了した3GPPリリース16において、免許不要周波数帯(非免許帯)を用いる5G仕様として「NR-U(Unlicensed)」が策定された。米国を中心に実用化に向けた準備が始まっており、ローカル5Gにも大きな影響を与える可能性がある。

リリース16で定められたNR-Uの概要を整理しよう。使用する周波数帯は5GHz帯と6GHz帯。下りリンクで最大320MHz幅、上りで最大80MHz幅を使って通信できる。リリース17以降では60GHz帯についても検討される予定だ。

導入形態は、アンカー型とスタンドアロン型の2つがある(図表)。

図表 NR-Uの導入シナリオ(アンカー型とスタンドアロン型)

図表 NR-Uの導入シナリオ(アンカー型とスタンドアロン型)

前者は免許周波数帯と組み合わせて使う形態で、LTEまたは5G NRをアンカーに用いる。2010年代半ばに登場した「LTE-LAA(License-Assisted Access using LTE)」と同様の形態だ。LTEをアンカーとして同時接続する(Dual connectivity)シナリオと、5G NRをアンカーとして5Gコアに同時接続またはキャリアアグリゲーションにより接続するシナリオが用意されている。

スタンドアロン型NR-Uは、アンカーなしに非免許帯のみで運用する。プライベート網により適した形態だ。

6GHz開放が普及を左右する日本でNR-Uが実用化されるかは、現時点で未定だ。米・欧など多くの国では、非免許帯で使用する無線技術に制限が設けられておらず、NR-Uの導入にも支障はない。対して日本は、技術要件や制度を決める際に候補として検討されていなかった無線技術を使うことは基本的に認められていない。クアルコムはNR-Uの標準化をリードしてきたが、同社の城田氏によれば、「総務省の会議で認められない限り、5GHz帯でNR-Uは使用できない」との認識が一般的だ。

6GHz帯については現在、世界各国で非免許帯として開放する動きが進んでいる。EU・英・米・韓などがすでに認可済みで、なかでも米国は1200MHz幅(5925~7125MHz)もの帯域が開放されている。これらの国は、デバイスさえあればNR-Uがすぐにでも使える状況にある。

日本ではこの3月末から、6GHz帯を用いる「Wi-Fi 6E」の技術検討が行われており、「ARIB等の業界団体が6GHz帯を技術的にニュートラルな帯域にしてほしいと要望している」(城田氏)。実現すれば、Wi-Fiの新規格が登場するたびに必要だった制度改正が不要になり、スタンドアロン型のNR-Uについても可能性が出てくる。「他国ではタイムリーに新製品が出せるのに日本では出せないといった面倒な状況を改善したい」と同氏は話す。

NR-Uが実用化されれば、プライベート5Gの選択肢は、ローカル5Gだけではなくなる。「免許申請や隣接地との調整が一切不要な点が、ローカル5Gと比べたNR-Uのメリットだ。一方、パフォーマンスについては、基本的に電波干渉なく使える免許制のローカル5Gのほうが高くなるはず」(城田氏)

Wi-Fiとの性能比較は、検証が進んでいない現状では難しい。NR-UはコアとRANで構成するので、システム構築の容易性についてはWi-Fiに軍配があがりそうだ。「広く普及したWi-Fiを置き換えてまで使うメリットが見えない限り、普及は厳しいかもしれない」と城田氏。先行して実用化される欧米でどこまで実績を積めるかが注目される。

月刊テレコミュニケーション2021年7月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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