ワイヤレスジャパン/WTP2021ローカル5Gと公衆網はどう組み合わせる? NICTが考える2つの使い方

ワイヤレスジャパン/WTP2021のNICTブースでは、無線通信に関する最新の研究成果を紹介している。中でも注目されるのが、通信キャリアのモバイル網との組み合わせによってローカル5Gを高度化しようとする取り組みだ。接続性の向上と高速化の2つの方向性で技術検研究・検証が進んでいる。

情報通信研究機構(NICT)では、ローカル5Gの高度化に向けた技術研究、実証実験が行われている。今回、ワイヤレスジャパン/WTP2021で成果が披露されたのが、「スポットセル高速接続技術」と「モバイル対応マルチリンク集約技術」だ。

どちらも、通信キャリアが提供する公衆向けモバイルサービス(以下、公衆網)とローカル5Gを組み合わせることで、ローカル5Gを高度化しようとするものである。前者のスポットセル高速接続技術は、簡単にいうと、ローカル5Gの接続性をより良くするために、公衆網を“サポート的に使う”方法だ。対して、後者は“両方を束ねて使う”ことでより高性能な無線通信を実現しようというアプローチである。

ローカル5G高度化に向けた実証実験の概要
ローカル5G高度化に向けた実証実験の概要(クリックして拡大)

以下、それぞれの仕組みと目的を紹介しよう。

公衆網を使って「ローカル5G接続の事前準備」
スポットセル高速接続技術は、端末がローカル5Gに接続しようとする際に行う「セルサーチ」を回避するのが目的である。

セルサーチとは、端末が、接続できる無線基地局を探す手順のこと。ローカル5Gの無線エリアはスポット的に作られるので、例えばクルマや列車等で高速移動している場合は、セルサーチをしている間にそのエリアを通り過ぎてしまうことも十分にあり得る。それでは、せっかく作ったローカル5Gエリアも宝の持ち腐れだ。

そこで、高速移動中のユーザーが目的のセルに到着する前に、公衆網を介して予めローカル5Gにリモート接続させておく。そうして事前に接続情報を入手し、セルサーチを省略すれば、目的のセルに到着次第、即座に接続できる。

実証実験で使われた無線機
高速接続実証の内容

NICTはこれをJR東日本らと共同で実証。JR東日本 烏山線(栃木県)で、自営のセルを構築して実験を行った。従来は接続に4分以上がかかっていたが、上記の技術を用いることで平均5秒以下に短縮できたという。

実証実験で使われた無線機
実証実験で使われた無線機

このように公衆網とローカル5Gの両方に接続し、切り替えを可能にすればその利便性は高まり、用途の拡大も期待できる。なお、端末に公衆網用とローカル5G用の2つのSIMを搭載し(デュアルSIM)、同時使用できれば(デュアルモード)、2つのネットワーク間で認証情報を共有することなく容易に組み合わせが可能になるという。

もう1つのモバイル対応マルチリンク集約技術は、公衆網とローカル5Gの無線リンクを束ねて、高速通信を行う技術だ。異なるオペレーターのマルチリンクを集約できる「MP-TCP方式」を利用し、公衆網とローカル5Gを同時に活用。受信電力に基づく接続制御によって、両ネットワークのエリアが重なる場所で効率的にマルチリンクを集約できることを確認した。

なお、ローカル5Gエリアを脱したときにはスムーズに公衆網のみの接続に移行し、補完的に利用することもできる。

NICTブースではこのほか、「テラヘルツ波」と呼ばれる300GHz帯を利用した無線通信技術や、海中ワイヤレス通信の研究成果なども紹介している。

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