5G基地局のオープン化を目指す「O-RAN」に注目が集まる一方、無線アクセス(RAN)とともにキャリアネットワークのラストワンマイルを担う光ファイバーアクセスでも、仮想化/オープン化が進んでいる。
これを主導しているのが、SDNの普及促進団体であるOpen Network Foundation(ONF)のSEBA(シーバ)プロジェクトだ。PON(Passive Optical Network)やG.fast等の光アクセス技術の仮想化を目的としており、適用先としてFTTHのほかモバイルバックホールやフロントホール(携帯電話基地局の親局と子局の接続部分)も想定されている。
このSEBAの活動において、PONの仮想化を推進しているのがオープンソースプロジェクトの「VOLTHA(ボルサ、Virtual OLT Hardware Abstraction)」だ。米AT&Tやドイツテレコム、NTTなど主要キャリアが参画。光回線終端装置(OLT/ONU)をはじめとする光アクセス設備の機能を汎用サーバー/デバイス、あるいはクラウドで実行し、SDNコントローラーから制御できるようにすることを目的としている。
目指すのはPON制御の自動化光アクセスはインターネット接続やIP電話、IPTV/動画配信などで使われているが、IoT/AIサービスの普及とともにその用途は多様化していく。そうした世界においてはPONの仮想化が不可欠と話すのは、古河電工の松本卓三氏だ。
「5Gのフロントホールも含めて様々なサービスが光アクセスに詰め込まれていけば、人の手で設定するのは不可能になる。自動化が必要であり、その前提として仮想化は避けられない」
古河電工はVOLTHAをベースとして、日本で主流のEPON(Ethernet PON)に使われるOLT/ONUを仮想化し、ソフトウェアによって仮想ネットワークを構築するSDN技術を開発した。これにより、サービスの使われ方に応じて回線状態を自動制御したり、需要に応じて動的に設定を変更し最適化したりすることが可能になるという。
この仮想化EPON技術によって光アクセス設備がどのように変化するのかを示したのが下の図表だ。
図表 既存のEPONシステムと仮想化EPONシステムのイメージ(画像クリックで拡大)
既存システムではサービスごとに異なるOLT/ONU装置を用い、専門の技術者が現場で設定作業を行う。これを仮想化することでハードウェアを共通化。古河電工の後藤健一氏によれば、「データセンタースイッチと同様、OLT/ONUもホワイトボックス化が進んできて」おり、そうした汎用ハードウェア上で動作する仮想化EPONを、SDNコントローラーから一元的に制御できるようにする。上位アプリやオペレーティングシステム、AIとSDNコントローラーを連携させて動的な制御を実現するのが最終目的だ。