有線と差が無い低遅延性能で スマート工場のニーズを満たすもう1つ、スマート工場で強く求められるものに、低遅延通信がある。AU-500はこのニーズに応えるため、基地局・端末に装備されたイーサネットポート間で10ms以下の遅延時間を保証している。「実際には遅延は7ms以下に抑えることができる」と池田氏は明かす。
エイビットでは、有線で行われている産業機器の制御システム(PLC)の通信を、AU-500を用いたローカル5Gで置き換えられるかを検証しているが、「遅延が10ms以下であれば、有線と差が出ないことが分かっている」という。
5Gは無線区間で1ms以下の超低遅延通信を目標としているが、その実現を待たなくても、AU-500を用いることでスマート工場のニーズに十分対応できるのだ。
工場では機器やアプリケーションに応じて独自の通信プロトコルが用いられるケースが少なくない。そこでAU-500では5Gの通信プロトコルを工夫、イーサネットフレームを直接伝送できるようにし、多様な通信プロトコルに対応しやすくしている。
通信プロトコルの簡略化も、AU-500の遅延時間の短縮に寄与しているという。
用途に応じたチューニングが可能 工場以外にも様々なユースケースさらに池田氏が、AU-500が多くの企業に支持されている理由として挙げるのが、「ユーザーの希望に応じて仕様をチューニングできる」ことだ。
エイビットではAU-500を導入しようとする企業にヒアリングを行い、そのアプリケーションに最適な仕様の製品を納入できる体制を整備している。
例えば、①AIを用いた画像解析に利用するために上りの伝送能力を強化する、②通信速度を抑えて同時に接続できる端末数を増やす、③変調方式を変更して電波の到達距離を伸ばすといったことが可能だという。
MIMOの実装などハードウェアの改修を伴う案件に対応したケースもある。AU-500は、チューニング次第で、スマート工場以外のさまざまなユースケースで活用できるのだ。
「アプリケーションに応じてチューニングできることが、ローカル5Gを普及させる鍵となる」と同氏は見る。
図表 AU-500の導入イメージ
産業用Wi-Fiに近い価格で ローカル5G商用機を実験試験局で技術検証が進められてきた4.7GHz帯ローカル5Gだが、2020年12月の商用免許の申請受付開始を機に、本格展開に向けた動きが活発になってきた。
池田氏は、「5G技術には詳しくないが、アプリケーションのトライアルを行いたいというお客様が増えている」と言う。こうしたニーズに応えるものとして、エイビットが開発を進めているのが、商用機の「AU-600」だ。
AU-600では、総スループットをAU-500の140Mbps から2Gbps、端末の通信速度を最大800Mbpsに引き上げ、スマートフォンなどの汎用端末も接続できるようにすることが計画されている。
さらに、ハンドオーバー機能を実装することでAGV(自動搬送車)の制御などにも利用可能にする。基地局装置に5Gコアを内蔵することも計画されているという。
AU-600の価格は基地局で約400万円。産業用Wi-Fiよりやや高い程度の価格に抑えることで、ローカル5Gの普及にはずみをつける。
エイビットでは、ローカル5G機器を自らの製品として展開するだけでなく、産業機器メーカーが、自社の製品にローカル5Gの機能を組み込んで提供できるようにすることも計画している。実際、産業機器メーカーと共同で組み込み用の基板の開発も進めているという。
「スマート工場向けローカル5Gのデファクトを狙っていきたい」と池田氏は意欲を見せる。
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