AWS Wavelengthは、5Gデバイス向けの低遅延アプリケーション開発・提供を可能にするサービスだ。いわゆるMEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)環境を構築するもので、通信事業者の5Gネットワーク内にAWSクラウド環境を構築し、ユーザー/デバイスに近い場所でアプリケーション処理を行うことで低遅延を実現する。
AWS Wavelengthを活用した5G MECの構成
通常、5GデバイスがAWSクラウドに接続する場合は、通信事業者の5Gネットワークとインターネットを経由する。そのため「遅延が大きくなるだけでなく、遅延の変動も起こる。5Gの特徴である低遅延をきちんと引き出すには、この遅延変動をなくすことが重要」だとKDDI 執行役員 ソリューション事業本部 サービス企画開発本部 副本部長の丸田徹氏は話した。
AWS Wavelengthを使うと、5Gネットワーク内のAWSクラウド環境(Wavelength Zone)でアプリケーション処理を行うため、インターネットを経由せずに済む。応答遅延が短縮されるのに加えて、遅延の変動もなくなる。低遅延通信サービスが安定して使えるようになるのだ。
KDDI 執行役員 ソリューション事業本部 サービス企画開発本部 副本部長の丸田徹氏(左)と、
AWSジャパン執行役員 技術統括本部長の岡嵜禎氏
丸田氏によれば、このAWS Wavelengthを使った5Gサービスを提供する事業者は「世界で現在4社のみ。日本ではKDDIだけ」だ。まず東京でサービスを開始した後、「近々に大阪でも開始する」。
低遅延だけでない様々なメリット
MECの最大のメリットは低遅延なリアルタイム処理が可能になることだが、AWSジャパン 執行役員 技術統括本部長の岡嵜禎氏は、AWS Wavelengthにはそれ以外にも多くの利点があると話した。
岡嵜氏によれば、MECを活用したアプリケーションを提供しようとする事業者からは、次のような要件が求められているという。「まず重要なのがクラウドモデルであること。お客様自らがインフラを用意するのではなく、従量課金モデルですぐに使えることが必要」だ。
それに加えて、「クラウドとエッジで同一のAPIで、同一の運用管理ができること。同じエクスペリエンス、同じ開発コードでアプリ開発ができること」と、使い慣れたAWSクラウドと同じようにMECが使えることも重要な要件になると指摘した。そのうえで、一般的なクラウドサービスと同様に「開発したアプリケーションを世界各国へ容易に展開できること」で、使いやすいMECが実現できるという。
AWS Wavelength活用のメリット
AWS Wavelengthは通常のAWSサービスと同じ特徴を備えているため、こうした要件に応えることができると岡嵜氏は強調した。「AWSリージョンと同じ単一の画面で操作でき、一度開発したアプリケーションをグローバルに展開できる」ことに加えて、開発環境も共通しているため「Amazon EC2、EBS、EKS、ECSとまったく同じサービスが(5Gネットワーク内に構築される)Wavelength Zoneで動かせる。開発者の方は新しいことを覚える必要がない」のも大きなメリットだ。
AWS Wavelengthのロケーションとしては、2020年8月から米ベライゾンと構築した米国内の数カ所に加えて、今回東京でサービスを開始。今後、世界中でロケーションを追加していく計画だ。