5G時代は、IoTの時代である。スマートフォンをはじめとした人間が操作するデバイス・アプリケーションだけでなく、センサーやロボットなど多様なデバイスがキャリアネットワークに繋がり始める。5Gは100万台/km2もの機器を同時に収容し、超低遅延という特徴も実現することからIoTのユースケースを多く創出していくと期待される。
実際に、シスコシステムズが2020年2月に発表したグローバルの年次調査書「Cisco Annual Internet Report(AIR)2018-2023」によれば、モバイル網へのデバイス接続数は2018年の88億からCAGR(年平均成長率)8%で増加し、2023年には131億になる見込みだ(図表1)。デバイス数やトラフィック量は全体として増加傾向にあり、モバイル網に限らず固定網を利用するIoTも増えていくだろう。
図表1 全世界におけるモバイルデバイス数とモバイル接続数の増加
NWへの負荷が急増この流れはキャリアにとっては産業用IoT(IIoT)などの新たな事業機会獲得のチャンスであると同時に、ネットワーク監視や運用のさらなる効率化が迫られる試練でもある。
というのもトラフィック量やデバイス数が増加して負担が増える一方で、1ビット当たりの単価は下がるからだ。加えて、足元では新型コロナウイルスもキャリアネットワークに負担をかけている。感染防止のため、企業も相次ぎテレワークを実施。「家にいる時間が増え、オンラインショッピングや映像コンテンツ、Web会議などのトラフィックが増加した」(マクニカネットワークス 渡部祥昌氏)。
総務省が民間各社の発表をもとに推計したところでは、新型コロナウイルスの影響で平日の固定網トラフィックは3~6割ほど増えている(図表2)。ソフトバンクも5月11日の決算説明会で、昼間の固定網のトラフィックはおよそ倍増し、モバイル網も何十%か増加していると述べている。
図表2 インターネット通信量の推移
そもそも、コロナ禍以前からキャリアインフラは専用ハードウェアと汎用サーバー上の仮想環境が混在する複雑な構成になっている。利用されているネットワーク機器もマルチベンダーの製品で構成されている状態だ。こうした背景から、キャリアはネットワークの監視もより効率的に行う必要が生じているのである。