ローカル5Gの重要な狙いの1つが地方創生。NTTグループの地域事業会社であり、ICTによる地域課題の解決を目指すNTT東日本/西日本もローカル5Gに注力する考えだが、具体的にどう活用していこうとしているのか。
NTT東日本は今年4月、子会社のNTTアグリテクノロジー、東京都農林水産振興財団との間で、ローカル5Gを活用した最先端農業の実装に向けた連携協定を締結した。ローカル5Gやスマートグラス、自律走行・遠隔操舵ロボットを活用し、遠隔からの効率的な農業指導やセンサーから集まるデータを基にした農作業支援を行う。
農業をはじめとする一次産業は、高齢化による人手不足や後継者不足が深刻化している。「ロボット等の活用による生産性向上や技能継承が求められており、ローカル5Gはその実現のためのツールと位置付けている」とビジネス開発本部 第三部門 IoTサービス推進担当 担当部長の渡辺憲一氏は話す。
図表1 ローカル5Gを活用した連携事業のイメージ
NTT東日本によると、農業以外にも製造業や流通業などがローカル5Gの導入を検討している。「広範囲でロボット制御等をする場合、既存のWi-Fiでは電波干渉や通信品質、カバレッジが課題になる場合がある。ローカル5Gを使えば、今ある通信規格の課題が改善できるのではと期待をしている」とビジネス開発本部 第三部門 IoTサービス推進担当 担当課長の野間仁司氏は語る。
既存の無線通信とローカル5Gを比較し、どちらがより適しているか見定めたいといった具体的な検証テーマを持っている企業は、NTT中央研修センタ(東京都調布市)と東京大学・中尾研究室(東京都文京区本郷)に設立された「ローカル5Gオープンラボ」を使って検証を行い始めているという。
中小企業向けにサービス展開もNTT東日本は東京大学とともに、「東京都立産業技術研究センター」(東京都江東区)におけるローカル5G環境の構築にも協力する。
都内には中小企業やスタートアップが少なくないが、そうした企業がローカル5Gを導入するには、手間やコストといった負担が大きい。このため東京都ではローカル5G環境を開放し、中小企業が開発した5G関連製品の性能評価や試作品の検証などを行えるようにする。NTT東日本は、東京都や東京大学、参画したパートナーとの取り組みで得た知見を基に、中小企業向けローカル5Gサービスの提供にも意欲を見せる。
長年、中小法人ビジネスに携わってきた渡辺氏は「中小企業の場合、ローカル5Gだけを導入することにはならない。社内のテレワークシステムやネットワークを含めたIT環境全体の見直しなど、トータルで依頼されるだろう」と予想する。ライセンスバンドのローカル5Gは、免許申請などの煩雑な手続きが発生するため、「ローカル5Gならではのサポートサービスもあるはず」と見る。
大企業だけでなくこうした中小企業向けにも特化したサービス展開で差別化を図りたいという。