電話やメール、チャットといった音声とテキストによるコミュニケーションに加えて、映像を業務に活用する企業が増えている。多くの情報を素早く伝えられる有用性は誰もが理解していながら、従来はさまざまな障害から利用が進んでいなかった。
最近になって、テレビ会議/Web会議に代表されるビジュアルコミュニケーションを企業が積極的に採用するようになってきた背景には、いくつかの要因がある。
1つには、会議の導入のしやすさが格段にアップしたことがある。
大容量の映像データをストレスなくやり取りできるブロードバンドネットワークが低コストで使えるようになった。また、テレビ会議システムも、映像・音声品質、使い勝手が向上するとともに低価格化している。初期コストとランニングコストの両面でユーザーの負担が大きく減少すれば、中堅・中小企業へと裾野が広がり、またシステムの大規模化も容易になる。
「コスト削減」はもう古い?
2つ目は、ユーザー意識の変化だ。
テレビ会議といえば多くの人が「移動費・出張費の削減」を即座にイメージするだろう。特に2008年末以降、企業のコスト削減ニーズに応える形で、テレビ会議/Web会議ベンダーはこぞってこの経費削減効果をアピールした。こうした訴求はビジュアルコミュニケーションの普及拡大に大きく貢献したが、現在は少々事情が変化してきているようだ。
出張経費の削減効果はユーザーの関心を引き付けたり、投資対効果を算定する場合に役立つ。だが、実際に案件化するケースでは、移動時間の短縮や、コミュニケーションの質を高めて業務効率を上げるといった効果が高く評価されている――。
メーカーやSIer/NIerからは、そうした声が良く聞かれる。図表1に示した、シード・プランニングの調査結果(テレビ会議の導入理由)もそれを証明している。「経費削減」がトップに来ているが、「移動時間の節約」や「業務効率化」「情報伝達の迅速化」「社内コミュニケーション充実」といった項目も高い数値を記録している。ビジュアルコミュニケーションをビジネスの強化に使うという「攻め」の意識が浸透している証左と言える。
図表1 テレビ会議の導入理由 |
あるSIerからは、「画像が綺麗とか、経費が削減できるといった効果を繰り返しアピールしていても、市場はこれ以上広がらない」との声も聞かれる。この風向きを捉え、ビジュアルコミュニケーションを「他社と差をつけるための武器」として売り込む提案こそが、今こそ求められている
イントラの壁を越える
3つ目の要因はWeb会議の普及だ。
PCを端末として使えるため、「会議」という特別な状況だけでなく、電話やメールと同じ個人レベルのコミュニケーションツールとして展開できる。これが、ビジュアルコミュニケーションの効能をユーザーに広く認識させる大きな要素となっている。
最近は特にSaaS/ASP型のものが充実してきている。クラウド型で利用できる利点はさまざまあるが、ここでは特に、イントラネット内を超えて活用シーンが大きく広がるという点を強調したい。外出中や在宅の社員と企業内がつながるのはもちろん、短期間あるいはスポット的にも使えるため、企業間、さらには企業と顧客を結ぶツールとしても使える。
テレビ会議システムは、導入・維持コストが低廉化したとはいえ、やはりある程度コミュニケーション頻度の高い拠点間でなければ導入できない。SaaS/ASP型のWeb会議であれば、映像の持つ情報伝達力の高さを社外とのコミュニケーションにも役立てられる。イントラネット内だけの利用に比べ、ビジネスの効率性は飛躍的に高まるはずだ。