<特集>働き方のミライへ - コロナ危機を越えてピープルアナリティクス革命 「科学的」にリーダーを発掘

組織人事の領域をデータ化して、分析する「ピープルアナリティクス」の取り組みが増えてきた。生産性の高いチームの特徴を明らかにしたり、離職率の低下などにつなげることが可能だ。

生産性の高いハイパフォーマーとそうでない人・チーム。いったい何が両者を分けているのか――。

こうした問いに頭を悩ませている経営者や人事担当者は多いのではないだろうか。

ハイパフォーマーに限らない。どんな人物がリーダーとして昇進すべきなのか。どんな人間を配置すれば業績が低迷している部門を立て直せるのか。こうしたことを経営者や人事部門は判断しなくてはならない。

ところが「組織人事の領域はほとんどデータがとれていない。データがないからPDCAもまわせない」のが現状だとHumanyze Japan 日本地区統括マネージャーの東田真樹氏は指摘する。そのため、従業員の生産性や配置転換は企業にとって重要なことであるにもかかわらず、担当者は勘や経験でこれらをこなさなくてはならなかった。

Humanyze Japan 日本地区統括マネージャーの東田真樹氏
Humanyze Japan 日本地区統括マネージャーの東田真樹氏


人事領域を定量化そこで近年注目されているのが「ピープルアナリティクス」だ。コミュニケーションの量や質など、人事に必要なデータを可視化・分析することで科学的に生産性を高めようとする取り組みである。

ピープルアナリティクスは具体的にどのように取り組むのか。東田氏はHumanyzeが収集するデータについて、「メール、チャット、スケジューラー、カレンダーなどの情報を我々のソフトウェアで収集する。また、首からかけるカード型のセンサーで位置情報も集める」と説明する(図表1)。

図表1 Humanyzeのピープルアナリティクスソリューション概要

図表1 Humanyzeのピープルアナリティクスソリューション概要

これらの情報からデジタルとリアルの双方で、コミュニケーションの量を定量的に計測して分析する。特筆すべきはコミュニケーションの中身までは可視化しないことだ。「メールの中身も見ない。GDPRなど個人情報保護への配慮も大きな理由だが、『誰が、いつ、どんなツールを使って、どこでコミュニケーションしているのか』が分かるだけでも生産性改善に結びつく示唆が得られるからだ」

鍵は「休憩」の取り方実際の改善例を見てみよう。とある銀行ではコールセンター職員のパフォーマンスにばらつきが大きいことや、離職率の高さが課題だった。

「社内で学歴、社歴、地域差などいろいろな視点で分析したが全く相関が見られなかった」と東田氏は語る。

そこで、Humanyzeがハイパフォーマーとそうでないチームのコミュニケーションを定量化したところ、分かったのは「休憩の取り方」の違いだった。

「1件当たりのクロージングの時間が短いチームは、休憩時間が重なっていた。また、そのチームのメンバーは離職率が低かった」

そこで、そのコールセンターでは、一緒に休憩を取るグループと、従来通りバラバラに休憩を取るチームに分けて分析を継続。前者はクロージング時間がおよそ25%も短くなり、離職率も25%ほど低くなったという。「その銀行では特別な投資を必要とせず、『休憩時間を変える』だけで成果を得られた」と東田氏はピープルアナリティクスの効果を強調する。

月刊テレコミュニケーション2020年5月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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