「健康に投資するとそれ以上のリターンがある。これが健康経営の基本だ」。O:(オー)代表取締役社長の谷本潤哉氏はこのように解説する。
O:(オー)代表取締役社長の谷本潤哉氏
経済産業省によると、健康経営とは従業員の健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することだ。ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)がグループ250社、約11万4000人の従業員を対象に行った調査では、健康経営への投資1ドルのリターンが3ドルになるとの結果が出ている(図表1)。健康経営は、決して従業員への福利厚生やCSR活動に留まるものではない。医療コストの削減、従業員のモチベーションや生産性の向上、イメージアップ、リクルート効果といった形で、組織の業績向上などに繋がるのだ。
図表1 高ROIが実証されている健康経営
当初は一部の企業が独自に取り組んでいた健康経営だが、政府も積極的に推進している。
2015年から経済産業省と東京証券取引所は「健康経営銘柄」の選定を始めた。健康経営に取り組むための組織体制が構築されているか、といった視点などから、積極的に取り組んでいる上場企業を認定する仕組みだ。認定された企業は対外的に健康経営に取り組む優良な法人であるとアピールできるようになっている。
継続的な健康改善を目指す最近の健康経営の動向について、バックテック 代表取締役社長の福谷直人氏は「今までは健康セミナーの開催やウェアラブルデバイスの配布など、単発的な取り組みが多かったが、費用対効果を検証して継続的にPDCAを回すような本格的な取り組みが増えている」と説明する。
バックテック 代表取締役社長の福谷直人氏
その理由は持続的な取り組みでないと、成果が得られにくいことに多くの企業が気づき始めたからだ。「3年ほど前に、ウェアラブルデバイスを配って従業員の健康状況をまずは可視化する取り組みが『ブーム』になった。可視化したら従業員は健康に気を遣うようになり、行動も改善されるという期待があったためだ」。
ところが、実際には個人任せの取り組みでは成果が得られない。「健康上の問題で生産性を落としている人ほど健康行動が継続しない」(福谷氏)といった傾向があるためだ。そこで、企業は自社の環境を踏まえた上で、継続しやすいソリューションに注目するようになっている。