5Gサービスはどのように始まり、そして進化していくのか。
その過程は3段階に分けて考える必要がある。5G NR(New Radio)の導入、つまり無線部分の5G化によって超高速モバイルブロードバンド(eMBB)サービスがスタートする「初期段階」、LTE周波数帯のNR化とコアネットワークの5G化が進行する「拡充段階」、そして5Gのフル仕様が導入された後の「成熟段階」だ。
この段階的展開と並行して、携帯電話事業者(以下、携帯キャリア)によるエリア拡大と5G端末の拡充が進展。2023年以降に“真の5G”が姿を表すことになろう。
図表1 5Gの段階的展開
<初期段階の5G>インフラ整備は急進も端末価格が足かせに2020年春の商用サービス開始時点での5Gの姿を予想してみよう。
スタート時の5Gサービスは、現在の「スマートフォン向けモバイルブロードバンド」の延長線上に位置付けられる。5G基地局の展開エリアについてNTTドコモは、「都市部から地方までトラフィック需要の高い場所や、5Gサービス・ソリューションで新規に需要が顕在化する場所(各種施設やスタジアム・ライブ会場や工場など)を予定」としているが、こうした“5Gゾーン”でeMBBによる高速・大容量通信が利用できる。
性能については、9月から行われたプレサービスの実績が参考になる。
ドコモは3.7/4.5/28GHz帯の3種の周波数帯を使用。最大通信速度(受信時)は、3.7/4.5GHz利用時が2.4Gbps、28GHz利用時が3.2Gbpsだった。引き続き性能向上を目指し、2020年春に予定する商用サービスでは「プレサービスを上回るスペックを提供する予定」だ。
ただし、上記の数値はあくまで理論上の最大速度であり、かなり条件の良い環境でも実スループットは1Gbpsを下回るだろう。3.5GHz帯で5Gを全国展開している韓国を参考にすると、同国の3キャリアに基地局設備を提供しているノキアによれば、2019年9月に計測したある都市の下りリンクの平均スループットは500~600Mbps程度という。
LTEと5G NRを束ねて高速化スループット向上のカギとなるのは、LTEと5G NR間のキャリアアグリゲーション(CA)だ。CAは複数の周波数帯を束ねて高速伝送を行う技術であり、LTEでも使われている。これをLTEと5Gとの間で行う「NSA/Dual Connectivity」により、スループットを大きく向上させられる。
5G開始当初のNSA(ノンスタンドアロン)構成では、LTE基地局と5G端末の間で制御信号をやり取りした後、5G NRでデータ伝送を行うのが基本形だが、NSA/Dual Connectivityにより、セッション確立後の伝送にもLTEを活用できる。
韓国では、これが5Gサービスの高速化に一役買っている。
ノキアソリューションズ&ネットワークスで5G技術統括本部 本部長を務めるブライアン・チョー氏が9月に開催した同社イベントで紹介した例では、韓国の商用サービスにおいて、2×2MIMOに対応した5GスマートフォンでNSA/Dual Connectivityを用いた結果、最大1Gbps超のスループットを確認したという。なお、フィールドトライアルでは4×4MIMOの5G NRで1Gbpsを出し、これをLTEの500Mbpsと束ねて最大1.5Gbpsのスループットも実現している。
日本でもNSA/Dual Connectivityの活用が進むはずだ。ソフトバンクモバイルネットワーク本部 本部長の野田真氏は、「我々も当然使う。NSAでは一般的な使い方であり、スループット向上に寄与する」と話す。
ソフトバンク モバイルネットワーク本部 本部長の野田真氏(右)と、
同本部 ネットワーク企画統括部 技術企画部 部長の浅倉智一氏