8K映像で離れた場所から目視検査
2つめの「8K映像を用いた同一拠点内での整備作業支援」は、航空機の格納庫等に高精細カメラを設置しておき、その映像を使って、普段は整備士が目視で行っている点検作業を効率化・高度化しようというものだ。
8K映像を用いた同一拠点内での整備作業支援のイメージ
例えば、航空機の機体を点検する場合は通常、整備士が作業を行うための足場を組んだりする必要がある。時間がかかるうえ、危険も大きい。だが、格納庫の天井等に8K映像が撮影できるカメラを設置すれば、その映像で点検したい箇所をズームアップして目視点検が行える。天井でなくとも、機体から離れた場所から撮影するだけで、下写真のように細かな部位まで確認することが可能だ。また、人間が入り込めないようなところもファイバースコープ等を使って映像で点検することができる。
離れた場所から機体を撮影した8K映像(左)と2K映像(右)の比較。
2K映像ではぼやけてしまう箇所も、8Kなら鮮明な映像で目視点検が行える
なお、実証実験ではWi-Fi伝送と5G伝送を比較しており、Wi-Fiで8K映像を伝送する場合は映像の乱れが大きく、実用化するには5Gが必要であることが確認できたという。
こうした整備作業支援の取り組みだけでなく、JAL イノベーション推進本部では利用客向けサービスの高度化にも取り組んでいる。その例が、3つめの実証実験である「タッチレス搭乗ゲート」だ。現在は搭乗ゲートを通過する際、スマートフォンの画面に表示あるいは航空券に印字されているQRコードを読み取って利用客の認証を行っているが、これを“タッチレス”で行おうというものである。
具体的には、ゲート上部に取り付けられたアンテナから下方向に、ビーム状の5G電波(28GHz帯)を照射し、利用客のスマートフォン(専用アプリを起動)と通信して認証、ゲートの開放判定を瞬時に行う。スマホを取り出す必要もなく、ポケットやカバンの中にある状態でも通過が可能だ。
搭乗ゲート上部の5Gアンテナ(左)から、下方向にビーム状の電波を複数照射し、
ゲートを通過しようとする利用客の位置を確認。カバン内のスマホと通信して
利用客の認証と開放判定を瞬時に行う
実証実験では、搭乗ゲートと制御サーバーを同じ拠点内に設置して行ったが、制御サーバーを遠隔地に置いた状態でも瞬時の認証・判定が行えるという。
日本航空 執行役員 イノベーション推進本部長の西畑智博氏(左)と、
KDDI総合研究所 代表取締役所長の中島康之氏
日本航空 執行役員 イノベーション推進本部長の西畑智博氏は、「よりよい“カスタマージャーニー”を提供することが今回の取り組みの目的」と話した。引き続き、整備作業の遠隔支援だけでなく、利用客向けサービスの高度化も含めて、5G等の「新技術で品質と生産性の向上」に取り組む考えだ。