「今日の話には『スパイ』や『テロリズム』が絡んでいる」――。
セキュリティベンダー、パロアルトネットワークスの脅威研究チーム「Unit42」に所属する林薫氏は、やや不穏当な単語を交えて講演を説き起こした。
Unit42のメンバーは米国をはじめ、世界各地でサイバー攻撃の実態を調査している。判明した攻撃者の手口や目的、利用しているドメインなどはレポートやホワイトペーパー、ブログなどを通じて公開。攻撃者を特定して米国の捜査機関に情報提供を行い、逮捕・起訴につなげることもある。
「攻撃者の活動を未然に防ぐことで、デジタル世界に根付いた人々の生活、社会を守ることが、我々のミッションだ」と林氏は語った。
いまや、サイバー攻撃はさまざまな目的で行われており、生活や社会に対する深刻な脅威となっている。例えば、企業や行政機関から情報を盗み出す「スパイ」、金銭の窃取を狙うもの、いたずら、政治目的の実現の手段として攻撃を行う「ハクティビズム」、戦争やテロ、世論操作のために攻撃を行う者もいるという。
「動機は必ずしも1つではなく、複数の動機、目的が絡んでいることが多い。スパイ活動と金銭の窃取を同じグループが行っていたり、いたずらがエスカレートしてスパイ活動に至ることもある。スパイとテロリズムの線引きも難しい」
こう述べて、林氏はサイバー攻撃の実態の説明に移った。