Sigfox対応の消火器が最優秀賞――KCCSがIoTアイデアコンテストを開催

京セラコミュニケーションシステム(KCCS)は2018年12月8日、Sigfoxの活用アイデアを学生から募集する「IoTアイデアコンテスト」の本選を開催した。15組のファイナリストがプレゼンを行い、プロトタイプ部門はSigfox搭載のスマート消火器、アイデア部門は飼料の残量や牛の転倒を可視化する酪農向けソリューションが最優秀賞に選ばれた。

「Sigfoxの通信料金は、一番安くて年間100円。今まで通信できなかったモノが、ジュース1本くらいの値段で通信できるため、Internet of Thingsというより“Everything”になっていくのではないかと我々は考えている。ただ、おじさん、おばさんばかりではアイデアが古すぎるかもしれない。ぜひ若い人の力を活用したいと、アイデアコンテストを開催することにした」

京セラコミュニケーションシステム(KCCS)は2018年12月8日、「IoTアイデアコンテスト」の本選を都内で開催。同社代表取締役社長の黒瀬善仁氏は、このように開催趣旨を説明した。

このコンテストは、KCCSが全国展開するLPWAネットワーク「Sigfox」を活用した、生活を楽しく、便利で、快適にするアイデアを、学生から募集したもの。Sigfoxの活用アイデアを競う「アイデア部門」と、さらにプロトタイプを実際に作ってデモを披露する「プロトタイプ部門」の2部門に分かれている。審査委員長はIoTの権威である東洋大学 情報連携学部(INIAD)学部長の坂村健氏が務め、本選では合計70の応募からファイナリストとして選ばれた15組の学生がプレゼンを行った。

消火器の水力発電でSigfox通信50万円という最も高額の賞金が用意されたプロトタイプ部門の最優秀賞には、慶應義塾大学 大学院の山本浩之さんの「小型水力発電によるバッテリーレス・スマート消火器」が選ばれた。

(左から)KCCS 代表取締役社長の黒瀬善仁氏、プロトタイプ部門の最優秀賞を受賞した慶應義塾大学 大学院の山本浩之さん、審査委員長を務めた東洋大学 情報連携学部(INIAD)学部長の坂村健氏
(左から)KCCS 代表取締役社長の黒瀬善仁氏、プロトタイプ部門の最優秀賞を受賞した
慶應義塾大学 大学院の山本浩之さん、審査委員長を務めた東洋大学 情報連携学部(INIAD)学部長の坂村健氏

山本さんによれば、初期消火が効果的なのは発火から2分以内。火事が起こった際には、消火器で初期消火を素早く実施し、さらに消防署への通報、そして避難を行うことが求められる。しかし、初めて遭遇する緊急事態の中、これらの行動を的確に実行できる人はほとんどいないはずだ。

そこで山本さんが考案したのが、消火器を使用すると、同時にSigfoxで消防署へ通報できるスマート消火器だ。迅速な通報を実現でき、最終的な鎮火も早くなる。

バッテリーレス・スマート消火器のシステム概要
バッテリーレス・スマート消火器のシステム概要

その仕組みが面白い。小型の水力発電機を消火器のホース部分に取り付け、消火器の噴射圧力により発電した電力を使って、Sigfoxによる通信を行う。このためバッテリーレスで通報できる。消火器には10秒間以上の噴射持続が消防法で義務付けられており、低消費電力のSigfoxで通信するための電力は、この10秒間で得ることができるという。

「噴射時の圧力を活用することで、まったくの電池レスで消防署に連絡できる。低消費電力などのSigfoxの特性を上手に活かしており、社会的な益になることも高く評価した」と坂村審査委員長は授賞理由を説明した。

スマート消火器のデモ映像
スマート消火器のデモ映像。消火器を噴射すると、
Sigfoxで通報が行われ、消防署サーバのLEDが点灯した

Sigfoxで低コストに水位を可視化プロトタイプ部門の優秀賞(賞金10万円)は、「水の都の水先案内人」をプレゼンした阿南工業高等専門学校の小野瀬博貴さんと福本小夏さん、「格安スマート水田でIoT導入を手軽に実現」をプレゼンした東京電機大学の西垣一馬さんと河西達彦さんの2組に授与された。

水の都の水先案内人は、約500の河川がある徳島の活性化に、Sigfoxを活用するアイデアだ。河川の水位は、潮位や雨で大きく変動し、水位が上がると船が運航できないエリアも出てくる。そこでSigfox通信モジュールを搭載した水位計で、様々な場所の水位を見える化。これにより、水路をもっと自由に活用できるようにする。IoT対応の水位計はすでにあるが、部品代が合計で1万5000円程度と安価に実現している点などが評価された。

阿南工業高等専門学校の小野瀬博貴さんと福本小夏さんが試作した水位監視システム
阿南工業高等専門学校の小野瀬博貴さんと福本小夏さんが試作した水位監視システム。
マップ上に水位が表示される。右にいる
福本小夏さんが手に持つのがSigfox対応水位計だ

格安スマート水田も、Sigfoxの低コスト性を活かした。稲作では水管理が全体の作業時間の約3割も占めており、Sigfoxで水田の水位を遠隔監視できるようにする。LTEを活用した既存の水田向けIoTセンサーは、1基当たりの導入コストが約15万円、毎月の運用コストも数万円かかる。一方、格安スマート水田ではセンサーシステムをシンプル化するとともに、通信にSigfoxを用いることで、導入コストは約1万円、運用コストは月数百円~に抑えられるという。

東京電機大学の西垣一馬さんと河西達彦さん
東京電機大学の西垣一馬さんと河西達彦さんが試作した水田用の水位計。
Sigfoxで送られた水位データをタブレットなどで閲覧できる

アイデア部門については、都城工業高等専門学校の遠矢健太さんと細屋直樹さんの「RAKU☆CHIKU(らくちく)」が最優秀賞(20万円)、日本大学 大学院の竹平幸矢さんの「Seekfox」が優秀賞(5万円)を受賞した。

RAKU☆CHIKUは、酪農家の「思うように休暇が取れない」という悩みを解決するアイデア。Sigfoxで飼料の残量確認や牛の転倒検知を実現し、人手での定期的な確認・見回りの負担を軽減する。

また、Seekfoxは、ショッピングセンター向けの宝探しゲームにSigfoxを活用するというアイデアだ。

惜しくも最優秀賞や優秀賞は逃したものの、無人交通調査や心疾患の再発予防、空き家管理など、他にも多数の興味深いアイデアとそのプロトタイプが発表された今回のコンテスト。最優秀賞のスマート消火器をはじめ、ぜひ商用化してほしいというアイデアが多くあり、審査員からも「非常にレベルが高かった」という声が聞かれた。

KCCSでは、今後もIoTアイデアコンテストの開催を継続する予定だという。

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