病院、ホテル、福祉など、幅広い領域で活躍する日本型UC
――日本型UCの具体例としては、どのようなものがありますか。
竹井 まず挙げるのは、病院の例です。病院には診察、検査、入院、手術など様々なプロセスがあり、医療スタッフが密に連携を取ることで、患者と医療スタッフの待ち時間を減らすことが求められています。そこで、ある病院では、内線通話に加えてIMも導入し、状況に応じた最適なコミュニケーション手段を選択できるようにしました。
ホテルの例もあります。あるホテルでは、宿泊客への対応を迅速化するため、無線LANによる音声とデータを統合したUCシステムを導入しました。宿泊客からリクエストがあると、その内容や名前、部屋番号がIMで無線IP電話機に送信されます。また、フロア担当者が何らかの理由で対応できない場合には、依頼メッセージが自動的にフロアマネージャーに転送されるといった仕組みも実現しています。
IPTPC エバンジェリストの竹井俊文氏(NEC所属) |
千村 私が紹介したいのは、障がい者のテレワークに活用している例です。Web制作の会社なのですが、ソフトフォンなどにより在宅勤務を可能にしているのですね。
また、自治体がお年寄り向けの福祉に活かしている例もあります。テレビ電話でお弁当が注文できたり、体調が悪いときに緊急ボタンを押すとコールセンターとつながり、さらには病院や家族への自動連絡も行えるようになっています。
――UCというと、ホワイトカラーの生産性向上のためのソリューションというイメージを持っている人も多いと思いますが、UCは非常に幅広い領域で活躍しているのですね。
千村 ええ。ユニファイドメッセージングの発展系という欧米流のイメージですと、かなり狭くなってしまいますが、実際には非常に広いのです。
モバイルやブロードバンドの普及・発展が欧米より進んでいる日本では、UCも欧米とはまた違った発展の仕方をしているのだと思います。
――この連載の最後の質問になりますが、今後UCがさらに普及していくためのポイントは何だとお考えですか。
竹井 大学、病院、ホテル、福祉などは、課題が明確な分、アプローチしやすく、普及が進んでいくでしょう。反対に難しいのは一般オフィスです。実際にUCを活用すると、エンドユーザーの方は「すごくいい!」と口を揃えます。しかし、「それで、いくら収益が上がるんだ?」というと、一般オフィスの場合、効果を定量的に測定するのは容易ではないからです。
千村 そこが一番の問題ですよね。ただ、成功事例は次々と生まれてきています。こうした成功事例が広く紹介されていくことが、UC普及の起爆剤になると期待しています。
[第1回]「ユニファイドコミュニケーション」とは何ですか?
[第2回]進化する企業コミュニケーション――「端末と端末」ではなく、「人と人」をつなぐUCへ
[第3回]UCはどこから着手すればいい? 費用はいくらかかる?