本稿が焦点を当てるのは、2011年から提供が始まるNGNとISPとの「IPv6ネイティブ接続」だ。本来この機能は、NTT東西のNGN(フレッツ 光ネクスト)をアクセス網に使ってIPv6インターネットへ接続するために、NGNとISPを接続する機能である。しかし、このIPv6ネイティブ接続を利用することで、NGNを新たな企業通信のインフラとして活用できる可能性がある。その内容について検証した。
IPv4アドレスの枯渇とNGN
昨年あたりから報道されているように、全部で43億個あるIPv4アドレスの残りが少なくなってきている。すべてのIPv4アドレスを256のブロックに分けた場合、2010年8月時点で在庫として残っているのは14ブロック、わずか5%にすぎない。このままのペースで消費すると約1年後にはIPv4アドレスの中央在庫は枯渇してしまう。ただし、IPv4アドレスの在庫がなくなったとしても、これまでのインターネットが使えなくなるわけではない。そのため、すでにインターネットの普及が進んでいる地域ではすぐに大きな影響は出ないかもしれないが、世界的に見ればこれからインターネットの普及が進む地域も多く、今後はアドレスの数に事実上の制限がないIPv6の普及が進むと考えられる。
IPv4アドレスの枯渇自体は以前から予測されていたことであり、インターネットのIPv6への移行は必須の課題である。最新のネットワークとしてNTT東西が構築したNGNもIPv6/IPv4デュアルのネットワークであり、「フレッツ・キャスト」などIPv6だけで提供されるサービスも存在する。
ところが、NGNをアクセス網としたときのインターネット接続、すなわちISPとの接続については、現状ではIPv4での接続しか提供されていない。つまり、NGN経由ではIPv6インターネットにはつながらないわけだ。
NGNは最新のネットワークのはずなのに、なぜIPv6での接続が考慮されていないのだろうか。実は、以前からこの問題はわかっていたのだが、「IPv6マルチプレフィックス問題」と呼ばれる技術的課題が解決できず、解決を先送りしたままNGNの商用サービスを開始してしまったことが原因なのだ。