「我々が『オープンネットワーキング』を始めて、もう4年。ようやくお客様がそのメリットを享受するようになってきた」
オープン・ネットワーク事業(兼)サービス・プロバイダ事業 事業部長を務める西澤均氏は、Dell EMCのネットワーク事業の現状についてそう切り出した。
同社のいうオープンネットワーキングとは、スイッチやルーター等のネットワーク機器を構成するハードウェアとソフトウェアを分離し、ユーザーが目的や用途に応じて組み合わせて導入・運用できるようにすることだ。ハードとソフトが一体型で提供される従来型のネットワーク機器に比べて、ユーザーは多くの選択肢を持つことができ、コスト最適化しやすくなるなどのメリットがある。
Dell EMCはハード/ソフト分離型の「オープンネットワーキング」を提唱している
Dell EMCは2014年から、このオープンネットワーキングのモデルを体現する製品を、データセンターネットワーク向けに展開してきた。現在、ソフトウェアとしてはオープンソース「Open Switch」をベースとした「OS9」「OS10」を提供。ハードウェアについては、他社のネットワークOS/ソフトウェアもサポートするスイッチ製品「Zシリーズ」「Sシリーズ」等を販売している。
また、データセンター以外のいわゆる“キャンパスLAN”向けにもスイッチ製品「Nシリーズ」を用意。これらの製品群と、パートナーシップを組むBig Switch NetworksやCumulus Networks等のOS/ソフトウェアを組み合わせて、ネットワークのオープン化を進めるというのがDell EMCの戦略だ。
デル オープン・ネットワーク事業(兼)サービス・プロバイダ事業 事業部長を務める西澤均氏(左)と、
インフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括 ネットワーク事業部 シニアシステムズエンジニアの佐々木亮氏
西澤氏によれば、データセンター領域ではビジネスが順調に伸びているようだ。「データセンター向けネットワークの業界は、年に十数%で伸びているが、我々の成長はそれを遥かに上回る。今後もさらに伸びると見ており、投資を継続していく」。
「ほしい機能だけ」使える新モデル
ガートナーの予測によれば、オープンネットワーキングの市場規模は今後3年間で83億米ドル、8000億円超にも達する見込みだという。
Dell EMCはこの成長にさらに弾みをつけるため、新たな施策を打ち出した。ネットワークOS「OS10」の提供形態に新たなモデルを用意する。
これまでOS10の提供モデルは下の図表に示す2種類があった。
これまでのOS10の提供モデル
1つは、オープンソースであるOpen SwitchにDell EMCのサポートを付けて無償提供する「OS10 Open Edition」。低コストに利用できる反面、例えばL3ネットワーキングやMPLSといったネットワーク機能はユーザー自ら開発したり、他のソフトウェアを組み合わせる必要がある。
もう1つは、OS10 Open Editionに基本的なネットワーク機能をパッケージングして提供する「OS10 Enterprise Edition」だ。予め“よく使う”機能が備わっているので、Open Editionに比べて低リスクに利用できる。
ただし、Enterprise Editionの場合、「お客様は使わない機能にまでコストを払うことになるので無駄が生じる。これをなんとかしてほしいという声が上がっていた」とネットワーク事業部 シニアシステムズエンジニアの佐々木亮氏は話す。このニーズに応えるのが、下の図表に示した新モデルだ。
OS10の新モデル。ユーザーが使いたい機能を選別して導入できる
新モデルは、OS10と組み合わせて提供する機能を細分化し、“目的別パッケージ”のようなかたちで提供するもので、「L3ネットワーキング」「マルチキャスト」「インターコネクト」「MPLS」の各パッケージを提供する。ユーザーは、「必要な機能だけパッケージとして買える」(佐々木氏)わけだ。