「世界の工場」から「世界最大の市場」へと変容を遂げた中国は、今も多くの日本企業を惹きつけている。
いわゆるチャイナ・リスクによって一度はブレーキがかかった日本企業の中国進出が近年、再び活発化してきた。外務省の調べでは、日本企業の海外拠点7万1820(2016年10月時点)のうち半数近く(3万2313拠点、45%)が中国にあり、8422拠点の米国などを大きく引き離している。
越境EC・中国IoTにもリスク13億人の人口のうち3億を超えるといわれる中間所得層、豊富な労働力と、中国進出のメリットは多いが、一方でリスクも少なくない。
よく知られているのは行政手続の難しさや商慣習の違いなどだが、意外と見落とされがちなのが通信・ネットワークに関するリスクだ。中国の通信ネットワーク環境は、日本や欧米諸国のそれと大きく異なる。中国といえば、国レベルで行われているインターネット検閲システム「グレートファイアウォール」が有名だが、それ以外にも留意すべき点は少なくない。
中国政府にとって都合の悪い通信を監視・遮断するネット検閲システム「グレートファイアウォール」は、万里の長城のように“国境”を監視しているわけではない。その仕組みは一般的なファイアウォールで用いられている仕組みと基本的には同じだ。また、中国国内の通信も監視・遮断の対象となる |
特に、中国に進出する日本企業にとって大きな問題となるのが、中国国内から国外に接続する際の越境通信の品質だ。中国国内の拠点と日本の本社・支社、およびクラウドとの通信を安定的に行えるようにすることは簡単ではない。
さらに、日中間通信に問題を抱えるのは、中国国内に拠点を構える企業だけではない。日本国内から中国市場へ向けたオンライン商取引「越境EC」も当然ながら影響を受ける。
IoTも例外ではない。中国国内で使用される機械/デバイス等からデータを取得して利用する場合も、日中間通信の品質安定化は不可欠だ。
中国向けにビジネスを展開するうえで何に気をつければいいのか。その対応策も含めて整理しよう。