<特集>IoTと宇宙(第1回)人工衛星で「超広域IoT」――宇宙から地球をリモートセンシングする時代が本格到来

宇宙を飛行する人工衛星――。そこに搭載されたカメラがパチリと撮影する地球上の画像には、地上で普通に撮影するだけでは捉えられない情報が含まれている。農業、漁業、都市計画など、衛星画像の応用範囲は幅広い。

世の中で最も高価なIoTデバイスは何だろうか。その筆頭候補に挙げられるのが、人工衛星である。

例えば、気象衛星のひまわり。高度3万6000kmに配置されたこのIoTデバイスから送られてくる地球上の雲の画像は、天気予報に欠かせない。

従来、国家レベルでしか扱えなかった人工衛星というIoTデバイスだが、実は今この領域でイノベーションが起きている。

ひまわりのような観測を目的とした人工衛星のことはリモートセンシング衛星、略してリモセン衛星とも呼ばれるが、リモセン衛星ビジネスに参入する民間企業が次々と現れてきた。米国にはDigitalGlobe、Planet、BlackskyGlobal、OmniEarth、ロシアにはDauriaAerospaceなどがいる。

日本国内でも、複数の企業が名乗りを上げている。まずはキヤノン電子だ。今年6月、キヤノンの一眼レフカメラを搭載した小型のリモセン衛星の打ち上げに成功した。同社は、この衛星で撮影した画像を販売するビジネスを予定している。

アクセルスペースも2015年12月にリモセン衛星ビジネスに進出すると発表した。同社は、世界初の民間商用小型衛星を開発したことで知られる宇宙ベンチャー。これまで人工衛星の受託開発を行ってきたが、次のステージとしてリモセン衛星ビジネスを選んだ。超小型の地球観測衛星「GRUS」を打ち上げ、衛星によるデータプラットフォーム事業「AxelGlobe」をスタートする計画だ。「2018年内にはサービスを開始したい」と経営管理グループ長の太田祥宏氏は述べる。

アクセルスペース
(左から)アクセルスペースのブランドマネージャーで事業開発担当の山﨑泰教氏、
同社経営管理グループ長の太田祥宏氏

その計画の概要だが、まずは3機のGRUSを高度600kmの低軌道に打ち上げ、特定の地域を毎日観測するサービスを始める。2020年には10機体制、そして2022年には人間が経済活動を行うほぼすべての領域をカバーする全50機体制を完成させ、1日1回は撮影できるようにするのが目標だ。

「お客様が欲しいのは、画像ではなくて、画像から得られた様々なデータだ。地球上を毎日撮影し、機械学習などを用いて解析した日々の変化に関するデータを、プラットフォームを通じて提供したい」と太田氏は説明する。

一例として、農場の画像を解析し、肥料を撒く最適な時期を分析するなどのユースケースを想定しているという。

月刊テレコミュニケーション2017年11月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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