BluetoothとLoRaWANとの連携も技術・ビジネスセミナーで多くのセッション数が設けられたのが、LoRaWANの具体的なビジネス展開をテーマとする講演である。
推進団体のLoRa Allianceの中心メンバーの1社であるセムテックのセッションでは、まずLoRa Allianceの会員が500社を超え、42以上のオペレータがサービスを展開するなど、LoRaWANの普及がさらに大きな広がり見せていることが報告された。続いて、従来の「クラスA」仕様に加えて、基地局側の要求で「下り」の通信を可能にする「クラスB」、消費電力は増えるが下りの通信機能をさらに強化した「クラスC」などの新たな技術仕様が紹介された。
また、LoRaWANの導入形態には、①サービス事業者、自治体の通信サービスを利用する方法、②ベンダーのLoRa構築サービスを利用して自営網を構築する方法に加えて、③小規模なシステムであればキットやオープンソースのネットワークサーバーを活用して、ユーザーが自ら構築する方法もあるとし、LoRaWAN構築のための知識を得る機会などが紹介された。デバイス開発を手がけるBraveridgeのセッションでは、LPWA規格の概要が解説され「LoRaWANのシステム構築は難しくない」点が強調された。
ネットワークサーバーを手がけるActilityのセッションでは、LoRaWAN活用の最近のトレンドの1つとして位置情報を活用するユースケースが紹介された。GPSが使えないインドア環境で車椅子などの管理を行うためにBluetoothのビーコンとLoRaWANを組み合わせて活用するというもので、誤差2.5mの精度でのトラッキングが可能だという。
通信速度の制約が大きいLoRaWANでは、FOTAは実現しにくいといわれるが、Actilityではファームウェア全体ではなく修正に必要な所だけをデバイスに送り、更新を行うことで、FOTAを可能にするソリューションの提供を計画しているという。
シスコシステムズのセッションではLoRaWAN基地局からの電波を利用してセンサーにGPSを搭載しなくても20mから200mの精度での位置把握を可能にする「Geo-Location」が取り上げられた。
「Geo-Location」に対応するシスコのLoRaWANゲートウェイ装置
ACCESSのセッションでは、同社が開発したBluetooth搭載のLoRaWANデバイス「Human Tracker」を利用する位置情報ソリューションが紹介された。このデバイスにはGPSも搭載されており、屋内外で高精度の位置情報を把握できる。
ACCESSが展開するBluetooth搭載のLoRaWANデバイス「Human Tracker」
ACCESSではHuman Trackerの活用法として、搭載されたBluetoothの機能を利用して、ヘルスメータや環境センサーなどのデバイスを収容し、LoRaWAN経由でクラウドに接続するデータブリッジとして利用することも計画しているという。エヌエスティ・グローバリストのブースでは、Bluetoothを搭載した多数のセンサーデバイスのデータを集約してLoRaWANネットワークに接続するコンバーターユニット「SpreadRouter-BLE」が展示されていた。今後、近距離無線とLPWAを組み合わせたデバイスの展開が広がりそうだ。
LoRaWANでは多彩なプレイヤーが自社のニーズに合わせたデバイスの開発に乗り出すことになると見られている。こうした動きを見据えてRedwoodCommのブースでは、世界初となるLoRa対応デバイステスター「RWC5020A」が出展されていた。東陽テクニカのブースでは同社が8月にスタートさせたLoRaWANの認証試験サービスがアピールされた。
マクニカネットワークスのブースでは、PoC向けソリューションとともに、海外で利用されているプッシュスイッチやセンサーなどの多様なLoRaWANデバイスが展示され、来場者の関心を集めた。
LoRaWANに対応したセンサーやスイッチデバイス(マクニカネットワークスブース)