「5G成功の鍵は用途開拓にあり」、エリクソンのアジアパシフィックCTOが語る

2020年の商用化に向け5Gの標準化や技術開発の動きが加速してきた。こうした中、エリクソンが注力するのが5Gのユースケースの開拓である。アジア太平洋地区の技術責任者を務めるマグナス・エヴァブリング氏にその狙いを尋ねた。

――5Gの標準化や技術開発の動きが活発になってきました。エリクソンでは5Gの市場はどう動いていくと見ているのでしょうか。

エヴァブリング 2020年夏に5Gの最初の商用リリースが予定されていますが、5Gに多くのユーザーが入り、フル稼働するのはやや先になると思います。少し時間をかけて新しいユースケースが実現され、社会やビジネスを変えていくことになるでしょう。

5Gによって拓かれる新たなマーケットとして我々は「インダストリアル・インターネット」と呼ばれる分野に注目しています。IT・通信技術を活用してさまざまな産業のビジネスモデルを変革していこうという試みですが、このニーズに現在の通信システムは十分に対応できていません。そこでエリクソンでは、通信事業者や多くの企業と協力して、何がボトルネックになっているかを理解して、5Gによって改善していけるようにするための取り組みを進めています。

低遅延化でビジネスが変わる――ボトルネックには、どのようなものがあるのですか。

エヴァブリング まず挙げられるのがレイテンシー(遅延)です。

現在の移動通信システムではエンド・ツー・エンドで100ms程度の遅延が発生するケースが少なくありません。これを数十msレベルに短縮することで、作業効率を向上させ、新たなビジネスを展開できる可能性が出てきます。そこで具体的に何ができるか通信事業者やさまざまな分野の企業と協力して検証していこうとしているのです。

その1つとして、我々が鉱山などで重機を運用している会社などとスウェーデンで進めているプロジェクトでは、1000km程離れたところにある重機をまず4G(LTE/LTE-Advanced)のネットワークを使って遠隔操作できるようにしようとしています。こうしたシステムが実用化できれば、ある現場で作業を終えるとすぐに違う現場で作業することができ、スキルを持つ人材を有効に活用できるようになります。これを実現するためには、移動通信だけでなく、固定通信を含むネットワーク全体で遅延を短縮し、信頼性を高めなければなりません。でないと人を傷つけたり、機械を壊してしまうことになりかねません。

――4Gを用いて新しいユースケースを実現し、5Gにつなげようというわけですね。

エヴァブリング そうです。5Gでは削岩機にカメラを2台取り付けて、離れた場所から、オペレーターがバーチャル・リアリティを使って安全に作業をするといった運用が可能になるでしょう。こうしたシステムは遠隔医療などの分野でも使われるようになるはずです。この他にも輸送、製造業など、さまざまな分野で5Gがどう使えるかを検証していこうとしています。

例えば、複数台のトラックを先頭車両だけに人を乗せて、一列で車間距離をつめて走らせることができれば、人件費を抑え燃費も向上させることができますが、これを実現するには先頭の車両の操作が直ちに他の車両に伝わらなければなりません。低遅延で信頼性の高いネットワークが不可欠なのです。

――インダストリアル・インターネットでは、センサーネットワークなどを対象とした大量MTC(Machine Type Communication)への対応も重要なテーマになりますね。

エヴァブリング その通りです。このユースケースでは、内蔵電池で10年間稼働できるような高い省電力性や、デバイスコストの低減、同時接続数の拡大などが求められます。

現行の移動通信システムではこれらがボトルネックになっているのですが、3GPPで今年春に規格が固まった「カテゴリM」や標準化作業が最終段階に入っている「ナローバンドIoT」といった新しい技術規格の登場で、状況は大きく変わろうとしています。エリクソンでは、モバイルネットワークに接続されるIoTデバイス数が2021年には、2015年の4倍の12億7000万になると見ています(注:2015年11月発行のEricsson Mobility Report)。我々は将来500億のデバイスがモバイルネットワークにつながるようになると考えています。そのほとんどが5Gになるはずです。

――カテゴリMやナローバンドIoTは、4Gの拡張規格として標準化されています。5Gでの大量MTCはどのような技術で実現されるのですか。

エヴァブリング 5Gでどのような形で大規模MTCを実現するかは、これからの議論になります。

5Gでは新しく策定される無線技術、いわゆる「NewRadio」だけなく、4Gが引き続き進化していく部分も5Gの一部になると考えられています。その意味では、ナローバンドIoTやカテゴリMが初期段階の5Gで大量MTCを担うと捉えていいかもしれません。

3GPPでは、5Gで導入が見込まれている技術を4Gで先行的に実用化しようとする議論も進められています。例えば、参照信号などのやり取りを必要なものだけに限定し干渉を低減させるLean Carrierという技術が来年以降に4Gの拡張規格として標準化されますが、これは5Gで導入される技術の一部を前倒しで実用化しようとするものです。5Gと4Gは当面共通運用されることになるので、能力に大きな隔たりがないようにする必要があるのです。

月刊テレコミュニケーション2016年7月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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