NTTドコモと大日本印刷(DNP)は2010年8月4日、携帯端末向け電子出版ビジネスにおける業務提携で基本合意したと発表した。ドコモが持つ5600万の顧客基盤やネットワーク技術、課金・決済プラットフォームと、DNPのデジタル化やリアル・ネット・電子書店の運営ノウハウの融合を図る。
両社ではコンテンツ収集から配信、電子書店の運営までを一貫して行う電子出版サービスを今年10月末から11月を目途に開始する。共同事業会社の設立のほか、海外に向けた配信も想定した新たなビジネスの展開も検討するとしている。
NTTドコモ代表取締役副社長の辻村清行氏(左)と大日本印刷代表取締役副社長の高波光一氏 |
「リアルの書店と電子書店をニーズに応じてユーザーが自由に選ぶことができるハイブリッド型書店を実現したい」――。NTTドコモ代表取締役副社長の辻村清行氏はこう抱負を語った。詳細は未定だが、紙の書籍と電子書籍のセット販売や、リアルの書店と電子書店のポイントサービスの統合などが想定されるという。
DNPでは、書籍やコミック、雑誌、新聞など約10万点の電子出版コンテンツを揃えた電子書店を今秋オープンする。対応するのはドコモの端末で、開始当初はスマートフォンでのみ利用できる。ドコモは秋冬モデルで7機種のスマートフォンを投入する予定だが、このうち1機種は電子書籍専用端末になる。「Xperia」などすでに発売されているスマートフォンにもサービスを対応させるほか、年度内にはiモード端末でも利用できるようにするという。
また2011年4月には、「しおり機能」の提供も予定している。これにより、例えば通勤時間に携帯電話で読んでいた電子書籍を自宅に帰ってからPCで続きを読むといったことが可能になる。
プラットフォームはオープンで、「多くの出版社などのコンテンツホルダーや端末メーカーに参加を呼びかけ、読者の最大ベネフィットを実現したい」(DNP代表取締役副社長の高波光一氏)。出版社では講談社や小学館、端末メーカーではNECやLGエレクトロニクス、サムスン電子がすでに賛同している。
電子書籍をめぐる通信事業者の動きとしては、KDDIがソニーや凸版印刷、朝日新聞社と7月に企画会社を設立、年内のサービス開始を目指している。ソフトバンクモバイルもグループ会社の「ビューン」がアップル「iPad」向けに6月から雑誌や新聞のコンテンツ提供を開始した。ドコモとDNPでは特定の電子書籍フォーマットにはこだわらない方針で、将来的にはKDDIの端末やiPadでも利用できるようにしたいとしている。
国内の出版市場は新聞も含めると約2~3兆円規模といわれる。辻村氏によると、「電子書籍市場は5年後には5000~6000億円規模に拡大する。新会社は、そのうち数百円規模を目指したい」という。