サイバー攻撃から企業ネットワークを守るためのセキュリティ機能を包括的に提供するUTM(統合脅威管理)。近年は次世代ファイアウォール(NGFW)とも呼ばれるこの製品への注目が今年はさらに高まりそうだ。
サイバー攻撃が巧妙化・多様化するなか、企業は、最新の脅威に対抗するための新たなテクノロジーを導入する必要に迫られているが、同時に、セキュリティ対策にかかるコストの低減も課題となる。UTMに期待されるのが、このコスト低減効果だ。
UTMはファイアウォール、アンチウィルス、不正侵入防止(IPS)といった複数の機能を1台に統合することで、機器コストやライセンス・保守費用を抑えて導入できるようにした製品だ。管理対象が少なくて済むため、管理工数も削減できる。
この点が、中堅中小企業のニーズに合致し導入が進んできた。さらに、アプリケーション可視化・制御や、サンドボックス等の標的型攻撃対策機能の実装、処理性能の向上により、大企業でも個別機能に特化した専用機からUTMへの移行が進んでいる。
また、セキュリティ対策をこれまでほとんど行ってこなかった小規模オフィスでも、マイナンバー制度の施行を契機にUTM導入の裾野はさらに広がりそうだ。
こうした変化を受けて、UTMベンダー各社は次々と新機能の開発と製品ラインナップの強化を進めている。
中小向け新モデルが続々登場昨年後半から今年にかけて特に目立つのが、中小企業向けの新製品が続々と登場していることだ。
デル・ソフトウェアが2015年11月に、「SonicWALL TZ」シリーズの新製品5モデルを発売。ソフォスも12月に新ラインナップ「Sophos XG Firewall」の販売を開始した。「WatchGuard Firebox」シリーズを提供するウォッチガード・テクノロジー・ジャパンはこの2月、従業員20~35 名程度のオフィス向けの新モデル「Firebox T30/T50」を追加。チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズも「Check Point700シリーズ」を2月に発表した。
デル・ソフトウェアが2015年末から提供開始した中小企業、支店、リモートオフィス向けの新製品「SonicWALL TZシリーズ」。このほかにも、16年初頭にかけて複数ベンダーから新製品が相次いで発売されている |
これらの新製品で注目すべきトレンドがある。1つが、中堅・大規模向け製品とのプラットフォームの共通化、2つ目が処理性能の向上だ。
1つ目の「プラットフォームの共通化」は、中堅・大企業で使われる高度なセキュリティ機能を、中小企業向け製品でも使えるようにするのが目的だ。ウォッチガードでマーケティングマネージャを務める堀江徹氏は「ローエンドからミドルレンジ、ハイエンドモデルまですべて共通のセキュリティ機能を提供できる」と話す。例えば、同社の新製品Firebox T30/T50 は、IPSやアプリケーション制御に用いるシグネチャセットについても、ミドルレンジ製品と同じものを提供できるといったメリットがある。ソフォスも同様で、Sophos XG Firewallシリーズすべてで同じOSが稼働する。
これは、中堅・大企業にもメリットを生む。支店・支社、店舗等を展開している場合、ローエンドモデルを導入する小規模拠点と、ハイエンドモデルを使う本社等とで共通のセキュリティ機能を運用できるからだ。