Bluetoothの規格策定、認証を行う団体であるBluetooth SIGは2016年3月30日、記者会見を開き、Bluetooth技術の市場動向、ロードマップ等について説明した。開発者プログラムディレクターのスティーブ・ヘーゲンデルファー氏は、IoTにおける無線通信ニーズに応えるための今後の方向性として「3つの技術イノベーションがある」と話した。2016年内にも発表されるBluetoothの次期バージョンでは(1)通信範囲の拡大、(2)通信速度の高速化、ならびに(3)メッシュネットワークが構築できる「Bluetooth mesh」が盛り込まれる予定という。
Bluetooth SIG 開発者プログラムディレクター
スティーブ・ヘーゲンデルファー氏
(1)通信範囲の拡大については、Bluetoothの省電力仕様であるBluetooth Low Energy(BLE)の通信範囲を最大で4倍に拡大する予定だ。
通信範囲は最大で4倍まで拡大予定
これまでは、スマートフォンとその周辺機器(ヘッドセット、マイクやスピーカー等)など非常に近い距離にある端末同士を接続する用途が大半だったBluetoothだが、IoTでは屋内外のさまざまなシーンでの利用が想定される。通信範囲が拡大することで、住宅内の家電製品をネットワークにつないでスマートホームを実現したり、ビルや工場内の設備を遠隔監視するといったような多様なユースケースでBluetoothが活用できるようになる。
(2)の通信速度については、現行バージョンで最大24Mbps(BLEは1Mbps)であり、「より高いバンド帯に対応する」ことでこれを2倍に向上させる。通常、電波強度を高めるために電力を多く消費すれば通信速度は向上するが、消費電力は従来のまま速度アップを目指す方針という。これも、一旦設置したデバイスをメンテナンスなしに長期間使用することの多いIoTのニーズに応えるものだ。
そして、Bluetoothの画期的な進化を予感させるのが(3)のBluetooth meshである。これに対応したデバイス同士が相互に通信し、自律的に伝送路を構築、網目状の無線通信ネットワークを形成する。例えば、ビルや住宅内にBluetooth mesh対応デバイスを配置していくだけで、ビル/住宅全体をカバーするネットワークが自律的に形成できるようになる。
Bluetoothでメッシュネットワーク構築が可能になる
ヘーゲンデルファー氏は、「ノードの追加、出し入れが簡単に行なえる」と利点を強調した。また、1つのデバイスが通信できなくなっても自律的に他の経路で通信を回復させるため、通信の途絶が防げるのも大きなメリットだ。同氏は「スマートホームやビル設備の管理のスマート化などにBluetooth meshは力を発揮する」と述べた。