NEC、エッジコンピューティングを中核にIoT強化――開発要員は1000人に増員

「組織をあげてIoTプラットフォームを強化するために、IoT関連製品の開発体制を大幅に強化し、エッジコンピューティングを中核にしたIoT関連製品の開発に大きくシフトする」――。NECの常務執行役員常務でシステムプラットフォーム事業を担当する庄司信一氏は、11月9日に開催された会見で、同社のIoTプラットフォームの強化戦略についてこう述べた。

執行役員常務の庄司信一氏

NECはIoT関連事業ついて、2020年には社会ソリューションの分野を中心に3000億円規模にすることを目指しており、これを実現するために開発体制や製品の強化を図るという。現在、同社のシステムプラットフォーム事業の開発者はグループ全体で1万名いる。そのうち300名がIoTプラットフォームの開発に携わっているが、2016年度には700名増やして1000人体制にする。また、IoT関連の製品は、エッジコンピューティングを中核に強化を進める予定だ。

執行役員の福田公彦氏

次いで、強化方針の内容の説明に立った福田氏は、これまでのICTの変遷を「メインフレーム時代」「クライアントサーバ時代」「クラウド時代」に分け、その上でこれからは「IoT時代」になり、そのIoT時代には「①エッジコンピューティング、②分散協調型処理、③デバイスネットワーク層でのセキュリティの強化」の必要性が出てくると分析した。

NECによるエッジコンピューティングの概念では、デバイスとクラウドの間にエッジコンピュー
ティングのレイヤーを設ける

IoT時代に突入すれば大量のデバイスから膨大なデータが上がってくるようになるが、それらを全てまるごとクラウドなどのデータセンターに蓄積して分析処理をすれば、システムへの負荷が高まってしまい問題が発生しかねない。それを回避するには①エッジコンピューティングが重要となり、膨大なデータの中から有効なデータを抽出するといった一次処理をエッジ側で行うために、エッジコンピューティングの層をクラウドとデバイスの間に導入する必要があるという。

さらに、蓄積されるナレッジをもとにリアルタイムにデバイスなどを制御することがIoT時代の新しい価値を提供するためには不可欠であるとし、エッジコンピューティング上でのリアルタイム処理を実装していく考えだ。

分散協調型処理は、アプリケーションがコンピューティング環境を移動して実行されることで
負荷を軽減する「移動実行型」と、アプリケーションが分割されて各コンピューティング環境
でそれぞれ実行される「分割実行型」があるという

②分散協調型処理の説明では、イベント会場の例が挙げられた。あるイベントに想定を超える人が集まり、ネットワークがボトルネックとなってサービスの提供が遅延してしまう事態が発生した場合、ネットワークのボトルネックを解消するための方法として、クラウドより現場に近いエッジやデバイス側のコンピューティング環境にそのサービスを移動させることが考えられる。

このような分散協調型処理の実装に向けた取り組みはすでに始まっており、世界の各拠点に構築した複数のデータセンター間やオンプレミスとクラウドのシステム間で、同じアプリケーションを移動して実行することは技術的に可能になっているという。

そして③デバイスネットワーク層でのセキュリティ強化は、大量のデバイスが繋がる環境では重要な機能となる。クラウド時代までにデータセンター内のセキュリティは強化されてきたが、今後はデバイスまでつなげた全体でセキュリティを確保していくことが必要になる。

IoT時代に向けたNECのプラットフォームの強化方針

①~③を踏まえ、NECは「高速・高精度な分析処理」「分散協調型処理」「デバイス仮想型」「セキュリティ」「統合運用管理」の5つの観点から、IoTプラットフォームを強化していく予定だ。それに加え、様々なパートナー製品の中から最適なものを組み合せて、IoTプラットフォームを提供することを計画している。

会見ではこの日、発売開始となった4つの新製品・サービスも紹介された。

まず、高速・高精度な分析処理を実現するものとして、(1)サーバー基盤となる高密度型サーバーの「DX2000」(出荷開始予定は2016年2月)、(2)大量なデータを処理するための高速なコンピューティング環境で2017年度に導入予定の「ベクトル型スーパーコンピュータ」(同2017年)、 (3)離れた場所にあるリソースの接続を可能にすることでシステムの拡張性・柔軟性を実現する「ExpEther 40G」(同2016年3月)がある。

また、(4)「Collaboration Assistant」(同2016年)は、セキュリティレベルを保ちながら遠隔地にある端末のアプリケーションを操作できるようにするクラウドサービスだ。これを利用すれば、例えば現場の作業者がスマートフォンなどで収集したデータや作業状況を離れた場所にいる熟練技術者と共有できるため、リアルタイムで熟練技術者の指示を仰げるようになる。

NECはこれから世界のトップベンダーとエコシステムを形成し、パートナーと共にIoTで新しい価値提供していくという。庄司氏は、「現在、5~10の世界のトップベンダーと協議をしている。今まで以上にエコシステムに対してオープンに取り組み、パートナーと連携してお客様に新しい価値を提供していきたい」と抱負を語った。

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