昨年度までは思ったほど導入が進まなかったSDNだが、2015年度になって適用場所――どこに使えば、どのような効果が見込めるか――が明確化してきた。ベンダーの営業・提案活動もユースケースを絞り込んだ具体的なものになってきている。
シスコシステムズ SDN応用技術室 テクニカルソリューションズアーキテクトの生田和正氏は、「SDNは概念的な手法を指すものに過ぎない。SDN的なアプローチを現実的に、データセンターに適応するとこう、企業向けにはこう、キャリアにはこうと、それぞれにソリューションを整理してきている」と話す。
さらに、同じ市場セグメントでも、先進技術に対して積極的なアーリーアダプターもいれば、今すぐコスト削減に直結する製品が欲しいというニーズもある。そうしたユーザー個々のニーズや現状に応じた選択肢が広がったことで、SDN関連ビジネスはいよいよ浮揚の時期を迎えそうだ。
整理されてきたSDNの使い方SDNの導入目的・ユースケース、導入形態はどのようになっているのか。まず、SDN市場全体のトレンドから俯瞰していこう。
ユースケースは大きく次の3つに分けられる。(1)ネットワーク運用の省力化、(2)仮想ネットワークの迅速かつ柔軟な提供、(3)プログラマブルなネットワークの実現、運用自動化である。
(1)ネットワーク運用の省力化は、データプレーンと分離したコントロールプレーンに制御機能を集約することで、ネットワーク機器の設定等を省力化するものだ。SDNの最も基本的な使い方と言える。例えば企業LANにおいて、毎回SIerに費用をかけて依頼していた構成変更を、簡単なGUIで自前で操作できるようにするといったものだ。
(2)仮想ネットワークの迅速かつ柔軟な提供は、いわゆる“スライシング”と呼ばれる利用法だ。1つの物理ネットワークを多目的に利用するため、従来のVLAN等に比べて、仮想のネットワークスライスを容易に生成し、運用できるようにする。
(3)プログラマブルなネットワークの実現、運用自動化は、新しい機能を実現するSDNアプリケーションを開発したり、IT/クラウドシステムと連携させて、より高度なネットワーク制御を行うアプローチだ。新機能やサービスを創出して他社と差別化したり、ITアプリケーション側が求める要件に応じてネットワークを自動制御する。
こうした目的を実現するための製品選びと導入形態を考えるうえで重要になるのが、次の2つの軸だ。
1つは、既存ネットワーク機器の置換え範囲である。
既存設備をどこまで有効活用できるのかは投資対効果に大きく影響する。SDNベンダー各社は、既存のスイッチ/ルーター製品やネットワーク管理システム(NMS)を生かしつつ、NSMに機能を追加したり、ネットワーク末端のエッジスイッチを追加してオーバーレイ型でSDNを実現するといった最低限の投資で、まず前述の(1)(2)の短期的なメリットを実現し、将来的に(3)を目指すという方向性でソリューション開発、提案活動を進めている。