「モバイルの常識は変化している」、ガートナー針生氏が10の注目トレンドを徹底解説

「モビリティによる変革はもはや止められない」――。2015年5月に開催されたイベント「ガートナー ITインフラストラクチャ & データセンター サミット 2015」において、ガートナー リサーチ 主席アナリストの針生恵理氏はこう話した。モバイルはクライアント環境だけでなく、ビジネスも変えていくというのだ。

「モバイル・トレンド2015」と題する講演を行った針生氏は「注目すべきモバイルのトレンド」として次の10点を挙げた。

1.サービス化の進行
2.Microsoftの戦略転換
3.企業デバイスの多様化
4.ユーザー・ファーストがより重要に
5.モバイルをバイモーダルでとらえる
6.BYOD議論は棚上げされたまま
7.モバイル管理の進化
8.モバイル・セキュリティが変化
9.MCoE(Mobile Center of Excellence)の設立が進行
10.モバイルがNexusの重要なパートになる

これら10のトレンドに対して、企業はどう行動すべきなのか――。針生氏は1つずつ解説した。

1.サービス化の進行

1つめのトレンドは、「サービス化の進行」。針生氏はモバイルのサービス化を次のように定義した。「いつでも、どこでも、必要なアプリケーションやコンテンツをサービスとして利用できるようにする」ことである。

PCの世界観ではOSやアプリケーションなどといった“モノ”を買って使うという発想だった。しかし、モバイルでは、“サービス”として受け取ることになる。エンドユーザーにとっては最新のサービスを利用できるというメリットがあるが、企業にとっては問題が発生する。例えば、「Windows」でしか動かないアプリケーションや、「Internet Explorer 8」でしか動かないアプリケーションでは、サービスの世界では利用が難しくなることだ。

また、サービス化のトレンドは、これ以外の様々な領域にもインパクトを与えていく。例えば、モノを買った後にソフトウェアや受けるサービスを選ぶのではなく、最初からどんなインターフェースやアプリケーション、サービスがあるのかを考慮した上でデバイスを選択しなければならない。「これからは、サービスを含めた評価を行うことが重要になる」と針生氏は説明する。

2.Microsoftの戦略転換

Microsoftはこれまで、「どこでもWindows」。すなわち、どんなデバイスやハードウェアでもWindowsが動くことを戦略の中心にしてきた。だが、これからは「どこでもMicrosoft」に戦略を転換していくという。

つまり、スマートフォンやタブレットなどといったデバイスで、Microsoftの製品が動くことを戦略の中心に据える。例えば、Windowsデバイスではない端末上で、「Office 365」などのMicrosoftのクラウドサービスを利用してもらうといったような「マルチデバイスサービス」に方針を変えるのだ。

2015年後半には「Windows 10」がリリースされる。Microsoftは現在、モバイルの領域で苦戦しているが、Windows 10はモバイルを強く意識したOSだ。スマートフォンとタブレットPCで共通して利用でき、デバイスによってインターフェースが変化する。

さらに針生氏はWindows 10に関して、次のようにも指摘した。「企業が注意して押さえておくべきポイントは、Microsoftとユーザー企業との関係が変わること。ライセンスや提供形態が大きく変わるからだ。今から十分に注意して準備しておく必要がある」

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